前回のブログで示したような、14世紀の世界を、同じように人口停滞へ向かいつつある21世紀の国際情勢に当てはめてみると、図表に示したような展望ができるでしょう(拙著『平成享保・その先を読む』より)。
主な事象を一通り説明すると、次のようになるでしょう。
➀温暖化の進行
20世紀初頭からの100年間で0.74℃ほど上昇した地球の平均気温は、世紀を超えてさらに加速し、21世紀後半まで続く見込みです。
要因の9割は、人間の産業活動等で排出された温室効果ガス(主に二酸化炭素とメタンなど)と推定されており、これによって海水面の上昇や降水・降雪量の変化などが進み、洪水や旱魃、酷暑や暴風雨などの激しい異常気象が増加する一方、真水資源の枯渇、生物相の変化などで農業・漁業への影響が急増してきます。
②100年戦争の継続
中近東では前世紀半ばからのパレスチナ紛争や、ISLの勃興によるイラク紛争がなお続いていきますし、2020~30年代には米中戦争や米朝戦争の勃発可能性という、物騒な予想も取りざたされています(米中戦争については米・ランド研究所・報告書『中国との戦争---考えられないことを考え抜く』2016年7月)。
③スーパー耐性菌の大流行
科学文明の創造・拡大によって、自然界の細菌類が耐性を持ってしまったため、抗生物質が全く効かないスーパー耐性菌が、世界中ですでに猛威を振い始めています。
2013年には全世界で約70万人が死亡した、と米疾病対策センター(CDC)が推計していますが、日本でも2014秋以降、約2000人が感染し、60人ほどが死亡したとの推計もあります。
今後、この種の細菌による感染症の拡大で、2050年には世界中で年間およそ1000万人が死亡する、とCDCは予測しています。
④新政治リーダーの誕生
20世紀に世界の覇権を確立したアメリカ合衆国が弱体化し、ヨーロッパの統合を果たしたEU(ヨーロッパ共同体)もまた解体の危機に瀕しています。
このため、アジアではロドリゴ・ドゥテルテ大統領のフィリピン共和国、ヨーロッパでもヤロスワフ・カチンスキ「法と正義」党首主導のポーランドを筆頭に、フィンランド、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ノルウェー、スイスなどで右派政党がすでに政権に着いています。
今後はさらに強力な右派政権が、世界各地で次々に登場してくるでしょう。
⑤経済活動は拡大から鈍化へ
「パックス・アメリカーナ」の影響による、20世紀後半のグローバル化の進展で、新興途上国の経済活動が活発化した結果、先進国の経済はやや減速するものの、世界全体では2020年から2050年まで年平均3%強のペースで成長し、2050年ころには3倍近くになるものと予想されています(PwC調査レポート:2015年2月)。
しかし、この期間の後半になるにつれて、主要新興国の多くで労働年齢人口の伸びが鈍化してくるため、中国やインドなどの成長率がやや鈍化し、世界経済の成長は減速していくでしょう。
⑥近未来ルネサンスの開始
20世紀末から急拡大したインターネット文化がナルシシズムの肥大化から、ポピュリズムやオクロクラシー(衆愚政治)を引き起こします。
その後、人口飽和化の進展とともにこうした現象への反省が巻き起こり、世界各地でネオ・コミュニティズム(新地縁主義)や脱市場主義など、「ポストモダン」ならぬ「ラストモダン」の思想を育むようになっていきます。
いかがでしょうか。かなり無理な部分もありますが、今後の世界と日本を考えていく前提条件としては、それなりに参考になるものと思います。
なぜかといえば、何度も繰り返しますが、人口波動の生起する経緯、つまり人口と人口容量と人口抑制装置の3つの関係そのものが、人間社会の最も基本的な成立構造である、といえるからです。
0 件のコメント:
コメントを投稿