人口波動を生み出したのは、さまざまな文明の基盤にある時代識知ではないか、と推定しています。
前回、石器前波を創り出したディナミズム(dynamism:汎力説)を考えましたので、今回は石器後波を生み出したアニミズム(Animism:汎霊説)を取り上げます。
アニミズムは、【石器後波はアニミズムが作ったのか?】で述べたように、イギリスの人類学者、E.B.タイラーがその著書『原始文化(Primitive Culture)』の中で提起した観念で、生物・無機物を問わず、あらゆるモノの中に霊魂あるいは霊が宿っている、という考え方です。
換言すれば、アニミズムとは、【アニマは人間を超える!】で述べたように、動いている諸物の主体は、すべてが意思を持ち、生死を超えた、不可視の存在である、とみなす識知です。
前時代のディナミズムの上に、❶生命力のあるものはすべて意志や感情という「意思」を持つ主体であり、❷その主体は生死を超えて継続する、目には見えない存在である、という新たな観念を重ねたもの、ともいえるでしょう。
こうした観念は、客観的な識知論の次元で言えば、生死を超えた主体論、「インモータリズム(immortalism:造語=生死超越観)」とでも名づけられます。
とすれば、アニミズムと新石器文明の間には、次のような展開が考えられます。
①識知次元 アニミズムとは、人類が感覚で「身分け」したモノの中に、「識分け」によって何らかの精神性を意識し、それらを「言分け」によって「霊魂」や「霊」とみなしている点で、ディナミズムよりも理知界に近い識知である。しかし、その対象はディナミズム同様、識知界の底部において捉えられたモノコトである。 ②道具次元 アニミズムは、【インモータリズム(immortalism)の時代へ】で述べたように、動いている生命力には意志や感情を持つ主体があり、目には見えないものの、生死を超えて“循環”的に存続していると理解し、そのエネルギーを鋤や鍬など(農耕)、あるいは囲いや篭など(牧畜)を用いて“反復的”に利用する仕組みを創り出している。 ③文明次元 農耕・牧畜などで太陽エネルギーを集約的に利用する仕組みを造り上げ、その生産力によって、血縁・地縁集団や村落住民の生命の維持や拡大に応用するという、いわゆる新石器文明を創り出した。 |
以上のように見てくると、ディナミズムからアニミズムへ、人類は新たな時代識知の獲得によって、旧石器から新石器へと進展し、より大きな人口容量を作り上げていったのです。
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