2番めは「社会構造」で、それを支える国家連合制、民主主義制、市場経済制の3つを順番に考えていきます。
資本主義とは何でしょう。定義風にいえば、市場経済で行なわれる自由な競争を前提に、生産手段を所有する資本家が労働者を雇用して商品を生産・販売し、そこから利潤を獲得する経済体制です。
資本という経済手段は、近代以前よりさまざまな地域で小規模には存在していましたが、現代的な形での形態は、14~15世紀のルネッサンス期に生まれた「農業資本主義」と「商業資本主義」に始まるようです。
16~17世紀のヨーロッパで絶対王政が確立されると、生産体制において家内制手工業から工場制手工業(マニュファクチュア)への移行が進むとともに、工業構造の中に「資本」の生成と労働力の出現という初期的な産業形態が現れました。
18世紀後半~19世紀初頭、産業革命の進行によって、生産構造に中に資本家による「産業資本」が形成されたため、本格的な資本主義という形態が成立します。
こうした資本が経済構造を主導する資本主義諸国が増加するにつれて、絶対王政を倒して、産業資本家層による議会政治・政党政治などの統治構造が形成されるとともに、アジア・アフリカ地域などを植民地化する動きも広がりました。
19世紀の中頃までに、資本主義による商品経済はほぼ世界全域に行き渡り、工業化を果たした先進諸国群と、それらへ原料を供給し、かつ市場となる後進・植民地国家群という、跛行的な世界構造を成立させました。
このため、先進諸国内では「独占資本」の形成、資本家と労働者の階級的対立といった、新たな問題が拡大し始め、また植民地国家では独立運動が拡大しました。
19世紀末~20世紀の初め、銀行や財閥などの「金融資本」が産業資本を配下に収める「独占資本」が形成されると、それらは国家権力と結びついて領土や植民地を拡大し、市場と原料供給地を確保しようという帝国主義段階へと進んだため、ついには第一次世界大戦へと突入していきました。
一方、国内でも、資本家層による労働者への搾取が進みました。労働者は低賃金・長時間労働に曝され、女性や児童の雇用も日常的に行われたため、労働問題は次第に深刻化しました。
労働者側からは待遇改善や賃金上昇を求めて、労働組合の結成やストライキなどの労働運動が起こりました。こうした労使対立は帝国主義の進行とともにますます先鋭化しました。
そこで、資本主義に代わる、新たな社会体制をめざして、マルクス(Karl Marx)とエンゲルス(Friedrich Engels)によって理論化されていた「社会主義」が急速に拡大しました。
第一次世界大戦(1914~1918年)中の1917年の第2次ロシア革命が成功すると、生産手段共有化や計画経済などを目標とする社会主義国家の建設が始まり、1929年からの世界恐慌へ巧みに対応しました。
第一次大戦の後、恐慌や失業者の増大という資本主義のリスクを回避するために、イギリスの経済学者ケインズ(John Maynard Keynes)は、国家の財政運用で経済への介入を強める「修正資本主義」を打ち出し、アメリカのニューディール政策に大きな影響を与えました。
第二次世界大戦(1939~1945年)では、資本主義陣営と社会主義陣営がファシズムに対して共同戦線を張って戦いましたが、戦後になるとイデオロギー的な対立が表面化し、東西冷戦の時代となりました。
1970年代には、資本主義陣営において、ケインズ的な財政出動や公共事業による経済運営が「大きな政府」として批判されるようになり、1980年代からはイギリスやアメリカでは規制緩和や「小さな政府」をめざす「新自由主義」が採用されました。
1990年代になると、社会主義国において、ソ連は崩壊、中国では改革開放、ベトナムではドイモイ政策などが進められ、いわゆる「社会主義市場経済」が始まりました。
これとともに、一強と化したアメリカ合衆国流の「市場原理主義・新自由主義」が各国へと拡大し、世界市場の一極化と単一化をめざす「グローバル資本主義」が広がりました。
21世紀に入るや、2008年のリーマン・ショックによって、現代資本主義の病理が浮き彫りになりました。この危機はなんとか克服されましたが、所得格差の拡大、南北の対立、環境問題、資源問題などが世界共通の課題が顕在化してきました。
それにも関わらず、アメリカでは保護貿易主義の強化、イギリスではEUからの離脱、中国では経済の不安定化など、国別の対応でも混迷が目立ち始めています。
資本主義の現況は以上のようなものですが、これに対して、コロナ禍はどのような影響を及ぼすのでしょうか。重要なものを列記しておきましょう。
以上のように、コロナ禍は資本主義の今後にも、新たな課題を突き付けています。
資本という経済手段は、近代以前よりさまざまな地域で小規模には存在していましたが、現代的な形での形態は、14~15世紀のルネッサンス期に生まれた「農業資本主義」と「商業資本主義」に始まるようです。
16~17世紀のヨーロッパで絶対王政が確立されると、生産体制において家内制手工業から工場制手工業(マニュファクチュア)への移行が進むとともに、工業構造の中に「資本」の生成と労働力の出現という初期的な産業形態が現れました。
18世紀後半~19世紀初頭、産業革命の進行によって、生産構造に中に資本家による「産業資本」が形成されたため、本格的な資本主義という形態が成立します。
こうした資本が経済構造を主導する資本主義諸国が増加するにつれて、絶対王政を倒して、産業資本家層による議会政治・政党政治などの統治構造が形成されるとともに、アジア・アフリカ地域などを植民地化する動きも広がりました。
19世紀の中頃までに、資本主義による商品経済はほぼ世界全域に行き渡り、工業化を果たした先進諸国群と、それらへ原料を供給し、かつ市場となる後進・植民地国家群という、跛行的な世界構造を成立させました。
このため、先進諸国内では「独占資本」の形成、資本家と労働者の階級的対立といった、新たな問題が拡大し始め、また植民地国家では独立運動が拡大しました。
19世紀末~20世紀の初め、銀行や財閥などの「金融資本」が産業資本を配下に収める「独占資本」が形成されると、それらは国家権力と結びついて領土や植民地を拡大し、市場と原料供給地を確保しようという帝国主義段階へと進んだため、ついには第一次世界大戦へと突入していきました。
一方、国内でも、資本家層による労働者への搾取が進みました。労働者は低賃金・長時間労働に曝され、女性や児童の雇用も日常的に行われたため、労働問題は次第に深刻化しました。
労働者側からは待遇改善や賃金上昇を求めて、労働組合の結成やストライキなどの労働運動が起こりました。こうした労使対立は帝国主義の進行とともにますます先鋭化しました。
そこで、資本主義に代わる、新たな社会体制をめざして、マルクス(Karl Marx)とエンゲルス(Friedrich Engels)によって理論化されていた「社会主義」が急速に拡大しました。
第一次世界大戦(1914~1918年)中の1917年の第2次ロシア革命が成功すると、生産手段共有化や計画経済などを目標とする社会主義国家の建設が始まり、1929年からの世界恐慌へ巧みに対応しました。
第一次大戦の後、恐慌や失業者の増大という資本主義のリスクを回避するために、イギリスの経済学者ケインズ(John Maynard Keynes)は、国家の財政運用で経済への介入を強める「修正資本主義」を打ち出し、アメリカのニューディール政策に大きな影響を与えました。
第二次世界大戦(1939~1945年)では、資本主義陣営と社会主義陣営がファシズムに対して共同戦線を張って戦いましたが、戦後になるとイデオロギー的な対立が表面化し、東西冷戦の時代となりました。
1970年代には、資本主義陣営において、ケインズ的な財政出動や公共事業による経済運営が「大きな政府」として批判されるようになり、1980年代からはイギリスやアメリカでは規制緩和や「小さな政府」をめざす「新自由主義」が採用されました。
1990年代になると、社会主義国において、ソ連は崩壊、中国では改革開放、ベトナムではドイモイ政策などが進められ、いわゆる「社会主義市場経済」が始まりました。
これとともに、一強と化したアメリカ合衆国流の「市場原理主義・新自由主義」が各国へと拡大し、世界市場の一極化と単一化をめざす「グローバル資本主義」が広がりました。
21世紀に入るや、2008年のリーマン・ショックによって、現代資本主義の病理が浮き彫りになりました。この危機はなんとか克服されましたが、所得格差の拡大、南北の対立、環境問題、資源問題などが世界共通の課題が顕在化してきました。
それにも関わらず、アメリカでは保護貿易主義の強化、イギリスではEUからの離脱、中国では経済の不安定化など、国別の対応でも混迷が目立ち始めています。
資本主義の現況は以上のようなものですが、これに対して、コロナ禍はどのような影響を及ぼすのでしょうか。重要なものを列記しておきましょう。
①未曽有の危機にも関わらず、経済の実態と株価の推移が大きく乖離しており、資本の動向が経済動向を反映できなくなってきています。
②ウイルス禍の悪影響は、感染拡大や経済的負担などで、社会的に最も脆弱な階層へ不均衡に及んでおり、所得格差や生活格差をさらに広げようとしています。
③予防対策や景気回復策でさらに拡大する国家債務について、財政負担をどのように分担していくかが問われます。
④ウイルス禍の影響が比較的少ない富裕層への富裕税や累進課税率の再考、あるいはデジタル企業への公正課税をめざす国際協定の採択など、税制構造の改革が緊急の要件となるでしょう。
②ウイルス禍の悪影響は、感染拡大や経済的負担などで、社会的に最も脆弱な階層へ不均衡に及んでおり、所得格差や生活格差をさらに広げようとしています。
③予防対策や景気回復策でさらに拡大する国家債務について、財政負担をどのように分担していくかが問われます。
④ウイルス禍の影響が比較的少ない富裕層への富裕税や累進課税率の再考、あるいはデジタル企業への公正課税をめざす国際協定の採択など、税制構造の改革が緊急の要件となるでしょう。
以上のように、コロナ禍は資本主義の今後にも、新たな課題を突き付けています。
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