人口減少の原因は「少子化」である。・・・多くの新聞や雑誌が、このような表現をしていますが、これは正しいのでしょうか? もし誤っているとすれば、人口減少の直接的な原因はどこにあるのでしょう。
日本の人口は2008年の12808万人をピークに、以後は減少しているといわれています(総務省統計局)。この数字は、5年ごとに実施されている国勢調査の人口を基礎に,人口関連の諸資料(人口動態統計:厚生労働省、出入国管理統計:法務省など)から得られたデータで加除し、毎月1日現在の人口を推計したものです。
しかし、2008年は国勢調査の中間時点にあたるため、2010年の調査結果までの人口動態は補間補正されており、変動要因となる数字の合計と人口増減総数は一致していません。
このため、国勢調査の行われた2010年(12806万人)を基準とし、2013年(12730万人)までの3年間の減少数76万人について、その減少要因を調べてみますと、次のようになります。
出生数と死亡数の差である自然減が62万人、入国者と出国者の差である社会減が14万人で、減少数に占める比重は、自然減が81%、社会減が19%となります。
自然減62万人の内訳は、出生数316万人のプラスに対し、死亡数378万人のマイナスとなっており、両者の比重は前者が46%、後者が54%となります。
こうしてみると、人口減少に占める要因の比重は、概ね死亡数増が44%、出生数減が37%、社会減が19%ということになります。
要するに、人口減少の原因は、死亡数増加、出生数減少、出国超過の順となり、「少子化」よりも「多死化(死亡数の増加)」の方が大きいのです。とすれば、人口を増やすには、少子化対策よりも多死化対策、つまり死亡数を減らす対策の方が有効だ、ということになります。日本政府がもし人口増加政策を展開するとすれば、第1に減死化対策、第2に増子化対策、第3に入国増対策の順に、3つの面から取り組まなければならないでしょう。
にもかかわらず、「人口減少の原因は少子化だ」と単純に書いてしまう背景には、これ以上、死亡数が減っては大変だ、という思い込みがあるのではないでしょうか。死亡数が減っていけば、高齢者の数がますます増えて、社会や経済の負担をいっそう高まる。それでは、現役世代はたまったものではない。こうした危機感によって、人口減少の要因から「多死化」をあえて無視し、「少子化」だけに追い込んでいく。意識的に無視するのではなく、無意識に見落としているのかもしれません。
いうまでもなく、その危惧を否定することはできません。しかし、人口減少という現象を、既成の価値観や従来の社会体制などによって論じることは、本質的な問題の所在を見失わせることになります。むしろ、その本質を素直に受け入れて、そのうえで適切な対応をとる。それこそが、人口減少に直面した、私たち日本人の採用すべき方向ではないでしょうか。
このブログでは、既成の価値観を超えた立場から、人口減少社会の虚実を直視していきたいと思います。
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