「合計特殊出生率」よりも「有配偶出生率」の方が、直接的に出生数と結びついています。この指標は、結婚あるいは同棲している女性の出生率ですから、出産適齢期人口の増減を超えて、出生数を上げる可能性があります。
昨今、日本の政府が「少子化対策」と称して取り組んでいる、出産休暇や育児手当ての充実化、保育施設の増設などは、直接的にはこの数値に関わっています。さらに追加対策として実施されている、父親の産後休暇や育児休業取得の拡大、待機児童ゼロ化やパートのための特定保育事業創設、子育て支援委員会や子育てバリアフリーの設置など、より強力な支援策もまたこの出生率を上げることになります。
しかし、こうした政策でさほど成果が現れるとは限りません。確かにこれらの政策がうまくいけば、出生数はある程度回復するでしょう。だが、少しくらい増えたくらいでは、やはり出産適齢期女性人口の大幅減少を補うまでには到りません。
もし2005~08年の出生数109万人台を今後も維持しようとすれば、有配偶率が今後も変わらないと仮定して大まかに推計すると、2010年現在79‰(パーミル、千分率)の有配偶出生率を、2025年には96‰、2050年には156‰程度まで上げていかなくてはなりません。
156‰というのは、1人の女性が平均5人の子どもを産んでいた1950~60年代の水準ですから、そこまで上げるのはまず無理でしょう。現在考えられている程度の支援策では、1割程度上げるのがせいぜいです。
結局のところ、①再生産年齢人口の増加策、②有配偶率の向上策、③有配偶出生率の上昇策の、3つが3つともかなり困難なのです。とすれば、少しばかり出生数が回復することはあっても、それによって総人口が増加することなど、まずありえません。
にもかかわらず、少子化対策が成功すれば出生数が大幅に増えたり、人口が回復するかのように喧伝するのは、ミスリードそのものではないでしょうか。
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