2018年7月29日日曜日

22年前に「人口波動モデル」を提唱しました!

22年前、筆者もまた『人口波動で未来を読む』(日本経済新聞社、1996年)で、新たに「人口波動モデル」を提唱しました。

本書の中で、このモデルは「マクロ人口学のさまざまな成果を継承して、新たに構築した」ものであり、「環境、文化、文明、社会、経済といった諸要素を有機的に関連させた、巨視的な人口理論をめざすもの」と述べています。そのくだりを再掲しておきましょう。
(以下、本書より抜粋)

このモデルでは、最初に人口学の開祖R・マルサスの立てた2つの公準、⒜人間の生存には食料が必要である、⒝人間の情欲は不変である、を継承して、①人口は常に増加圧力を持つ、②人口は人口容量の範囲内で増加する、③人口容量の規模は、文化や文明による自然環境の利用形態によって決定される、というつの公準を改めて定立する。

続いてこれらの公準を前提に、人口の成長・停滞過程を、次のような動態仮説として設定する。
 
 仮説I・・・人口は、人口容量の拡大見通しがついた時、つまり自然環境の好転や、自然環境を利用する、新しい知恵・技術・世界観が生まれた時から、その増加を開始する。
 
 仮説Ⅱ・・・人口は、人口容量が低下した場合、あるいは人口容量の上限に近づいた場合に、さまざまな抑制装置の発動によって、その増加を停止する。この抑制装置は、文化の安定している時には主として「文化的抑制装置」が、また文化の混乱している時には「生理的抑制装置」が、それぞれ発動する。
 
  • 仮説Ⅱ-1・・・文化的抑制装置とは、人口が人口容量の上限へ接近した時、直接的抑制(死亡促進、妊娠抑制、出産抑制、人口分散など)、間接的抑制(生活圧迫、結婚抑制、家族縮小、家族・子どもの価値の低下、都市化・社会的頽廃化など)、政策的抑制(強制的な出産抑制、動乱・戦争、強制移動)といった文化的抑止力が自動的に作動し、単独もしくは複合的に人口増加を抑えるしくみである。
  •  仮説Ⅱ-2・・・生理的抑制装置とは、文化的抑制装置が作動しない時に、体力低下、寿命限界、生殖能力低下、胎児や乳幼児の生存能力低下などが、自動的に作動するしくみである。
 
 仮説Ⅲ・・・人口停滞が続く間に、人口容量を拡大する新しい知恵・技術・世界観が生まれてくると、それまでの「抑制装置」の鍵が外れ、本来の増加圧力によって人口は再び増加を開始する。
 
 仮説Ⅳ・・・人間は自ら自然環境を改善する能力、つまり文化や文明を創造する能力を持っているから、長期的にみれば、人口の推移は一つの人口波動から別の人口波動へ、次々に階を重ねる「多段階人口波動曲線」として描くことができる。

要するに、マルサスの『人口論・第6版』の論点を、現象学、言語学、生態学、社会心理学、文化人類学など、現代思想のパラダイムを応用して再整理したものであり、それ以上でも、それ以下(かもしれませんが)でもありません。

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