2015年12月21日月曜日

人口減少社会・日本の先例・・・石器前波の減少期

ヨーロッパ諸国における人口減少社会の実例を眺めてきましたが、日本列島においても、長期的な歴史を振り返ってみると、人口減少社会が何度か出現しています。

最初の事例は、石器前波における紀元前1万3000年から前1万年に至る約3000年間と思われます。

石器前波とは、紀元前3万年から前1万年に至る波動で、考古学や歴史学の時代区分では、旧石器時代といわれている約2万年間です。

今から約5万年前、地球上の各地に私たち現代人と同じタイプの人類である「新人」 が登場しましたが、このうちアジア地域の新人、つまり原アジア人は「東南アジア系」と「北アジア系」に分かれて、南北からアジア各地に広がり、その一部が4万~3万年前に日本列島に到達しました。

当時の自然環境を振り返ると、前3万~前1万年は寒冷な亜氷期でした。この悪環境の中で、新人たちは旧石器文明で列島に働きかけ、野生の動物を狩猟したり、野山の可食植物を採集して、次第に人口容量を拡大しました。

その規模は一体どれほどのものだったのでしょう。世界人口の推移を見ると、図に示したように石器前波がありましたので、日本人口の推移にもおそらく同じような波が存在したのではないか、という想像ができます。

そこで、日本の考古学や人類学の研究を一通り調べてみましたが、そうした事実を指摘したものは発見できませんでした。それならば、と筆者があえて石器前波の人口容量を推計してみました。詳細は拙著『人口波動で未来を読む』で述べていますが、要点は次の2つです。

①世界人口の石器前波(約600万人)と石器後波(約5000万人)の比率(前者/後者=0.12)を適用して、日本列島の石器後波(約26万人)から類推すると約3万人になる。当時の日本列島は、文明水準ではユーラシア大陸の後進地であったから、この数値はおそらく上限を示している。

②新人段階の世界の平均人口密度(0.04人/k㎡)に日本列島の面積(37.8万k㎡)をかけ合わせると約1万5000人になる。日本列島の自然条件は世界の平均を上回っているから、この数値は下限とみなすことができる。

以上のような推定を前提にすると、当時の人口容量は1万5000~3万人であったと思われます。そこで、3万人を上限として、人口の推移を考えてみますと、時間の経過とともに、世界波動と同じような増加・停滞・減少のプロセスを辿った可能性があります。

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