2023年10月24日火曜日

グローバル化を見直す!

人口減少の進行に伴って、新たな社会知として「科学(Science)」を超える「統合科学(Omni-science:オムニシェンス)」が芽生えてきます。

それとともに、倫理・使命感を持った新世界観が誕生し、「集約的・統合的構造性」という社会知が形成されます。

社会知の転換によって、社会構造を見直す傾向が強まり、グローバル化、国家運営制度、生産・分配制度などの修正が準備されることになるでしょう。 


最初のグローバル化にも「集約的・統合的構造性」の援用が必要です。

この社会知は「言語機能は分節化から合節化へ」「数値機能は数値絶対化から数値相対化へ」「把握機能はシステム化からストラクチャー化へ」の、3つから構成されていますので、グローバル化の今後にも適用してみましょう。

①言語機能:分節化から合節化へ

グローバル化という言葉は、人、物、金などが国境を越えて広く交流することを意味し、それこそが人類の発展方向だという価値観もまた内包しています。

しかし、野放図なグローバル化によって自国内の生産構造が次第に崩れ、些細な国際変動によって、自国民の生活が危機に瀕するケースが拡大しています。

こうした悪弊を防ぐには、まずは国内の自給構造を再構築し、それに対応した国際分業をめざすことが必要になります。いいかえれば、過剰な国際分業を見直し、国際分業と国内自給を改めて整合化することが急務なのです。

②数値機能:数値絶対化から数値相対化へ

国際情勢を大局的に把握するため、国際連合などでは統計的データによる集積と分析が行われています。ところが、現実の世界情勢は数値を超えて、刻々と変化しています。

世界人口の予測でも、国連人口部の「World Population Prospects 2022」(中位値)では、現在の79憶人から、2030年に85憶人、2050年に97憶人、2100104憶人に達すると予測しています。だが、コロナ禍の影響やSDGs(Sustainable Development Goals)の進展などで、ワシントン大の予測(最低値)では、2050年に87憶人、2100年には62憶人まで落ちていきます。

昨今の大きく変貌する国際構造に対応していくには、視野狭窄に陥りがちな数値・統計的把握だけに留まらず、意見収集・交流実態などを通じて、多様な情動的情報との統合を行い、政策の充実をめざすことが望まれます。

③把握機能:システム化からストラクチャー化へ

国連は環境対応型社会構造の目標として、SDGsを掲げています。だが、SDGsが進めば、人口減少が進んでいきます。つまり、SDGsの推進と人口の維持は対立する目標なのです。

とすれば、今や人口減少へと転換しつつある世界への対応は、もっとストラクチュアルに提示していかなければなりません。

ストラクチュアルとは、個別の目標の積み上げではなく、民主主義制、市場経済制、国際協調制などを含む、人類の社会構造そのものを、横断的、統合的、ラッピング的なアプローチによって、人口増加型から人口減少型へどのように変革していくか、を示すことなのです(具体策は後述します)

以上、3つの点からグローバル化の改善方向を述べてきました。

要するに、点と線による一元的な国際視点から、何層かの面を重ねていく多元的な国際視点への転換が求められているのです。

国家制度という分散的制度もまた大きく超えて、地球単位の社会安定制度が、新たな目標として浮上してきます。

とすれば、工業前波に続く工業後波では、国家という機能は存続させつつも、それらを超える、新たな超国家的な共同体を併設することも求められるでしょう。

2023年10月7日土曜日

ル・ルネサンスが始まる!

世界人口は今後30年ほどで減少していきます。

前回の「人口減少ショックの開始」に続いて、今回は「新たな人口波動の準備」を考えます。



世界人口がピークを過ぎて減り始めると、人口増加を前提に創られてきた、さまざまな社会装置が大きく揺らぎ始めます。

それと並行して、従来の社会装置を超える、新たな社会構造への模索が始まります。

かつて黒死病(ペスト)大流行の後、ルネサンスが開花したように、今回もパンデミックの後、「ル・ルネサンス」が開花するのです。

ル・ルネサンス」という言葉は、当ブログの造語です。元々のRenaissance(再生)がre(再)とnaissance(生きる)の合成語であるのを継承して、もう一度re(再)が訪れてRe-Renaissanceが開花する、という意味です。

今回のル・ルネサンスでは、現在の世界人口容量を超えて、新たな人口容量を創り出すための仕組み、社会的な知恵が模索されます。

それゆえ、最初の課題として、現代文明の基本構造である「科学」という社会知をどのように変えてゆくかという視点から、次の3つが浮上してきます。

1つは、工業前波の分散的な科学(Science)の後に、統合的な新科学(Omniscience)の到来を準備すること。

2つめは、倫理・使命感を持った新世界観(New Cosmologyを創造・並立し、分散型社会の暴走や弊害を抑えること。

3つめは、工業前波を主導してきた「分散的・個別的充足性」という理性を細かく反省し、もう一度「集約的・統合的構造性」という知性を回復させること。 

このような課題が達成されれば、次代の人口波動、工業後波を引き起こす、新たな社会知として「オムニシャンスOmniscience」が生まれるとともに、倫理・使命感を持った新世界観が誕生し、それに伴って「集約的・統合的集中性」という社会知が形成されます。

社会知の転換によって、社会構造を見直す傾向が強まり、グローバル化では、国家を超えた共同体の拡大が、国家観では、間接民主制の修正や超越的な行政運営などが、生産・分配制度では、国際分業や市場経済の見直し、資本集中や所得不均衡の是正などが、それぞれ準備されることになるでしょう。

各分野の方向や目標については、次回から考えていきます。