人口減少の進行に伴って、新たな社会知として「科学(Science)」を超える「統合科学(Omni-science:オムニシェンス)」が芽生えてきます。
それとともに、倫理・使命感を持った新世界観が誕生し、「集約的・統合的構造性」という社会知が形成されます。
社会知の転換によって、社会構造を見直す傾向が強まり、グローバル化、国家運営制度、生産・分配制度などの修正が準備されることになるでしょう。
最初のグローバル化にも「集約的・統合的構造性」の援用が必要です。
この社会知は「言語機能は分節化から合節化へ」「数値機能は数値絶対化から数値相対化へ」「把握機能はシステム化からストラクチャー化へ」の、3つから構成されていますので、グローバル化の今後にも適用してみましょう。
①言語機能:分節化から合節化へ
グローバル化という言葉は、人、物、金などが国境を越えて広く交流することを意味し、それこそが人類の発展方向だという価値観もまた内包しています。 しかし、野放図なグローバル化によって自国内の生産構造が次第に崩れ、些細な国際変動によって、自国民の生活が危機に瀕するケースが拡大しています。 こうした悪弊を防ぐには、まずは国内の自給構造を再構築し、それに対応した国際分業をめざすことが必要になります。いいかえれば、過剰な国際分業を見直し、国際分業と国内自給を改めて整合化することが急務なのです。 |
②数値機能:数値絶対化から数値相対化へ
国際情勢を大局的に把握するため、国際連合などでは統計的データによる集積と分析が行われています。ところが、現実の世界情勢は数値を超えて、刻々と変化しています。 世界人口の予測でも、国連人口部の「World Population Prospects 2022」(中位値)では、現在の79憶人から、2030年に85憶人、2050年に97憶人、2100年104憶人に達すると予測しています。だが、コロナ禍の影響やSDGs(Sustainable Development Goals)の進展などで、ワシントン大の予測(最低値)では、2050年に87憶人、2100年には62憶人まで落ちていきます。 昨今の大きく変貌する国際構造に対応していくには、視野狭窄に陥りがちな数値・統計的把握だけに留まらず、意見収集・交流実態などを通じて、多様な情動的情報との統合を行い、政策の充実をめざすことが望まれます。 |
③把握機能:システム化からストラクチャー化へ
国連は環境対応型社会構造の目標として、SDGsを掲げています。だが、SDGsが進めば、人口減少が進んでいきます。つまり、SDGsの推進と人口の維持は対立する目標なのです。 とすれば、今や人口減少へと転換しつつある世界への対応は、もっとストラクチュアルに提示していかなければなりません。 ストラクチュアルとは、個別の目標の積み上げではなく、民主主義制、市場経済制、国際協調制などを含む、人類の社会構造そのものを、横断的、統合的、ラッピング的なアプローチによって、人口増加型から人口減少型へどのように変革していくか、を示すことなのです(具体策は後述します)。 |
以上、3つの点からグローバル化の改善方向を述べてきました。
要するに、点と線による一元的な国際視点から、何層かの面を重ねていく多元的な国際視点への転換が求められているのです。
国家制度という分散的制度もまた大きく超えて、地球単位の社会安定制度が、新たな目標として浮上してきます。
とすれば、工業前波に続く工業後波では、国家という機能は存続させつつも、それらを超える、新たな超国家的な共同体を併設することも求められるでしょう。
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