少子化=少産化対策の効果を計るため、巨視的背景を考えてきました。
3月末に政府が少子化対策の叩き台「子ども・子育て政策の強化について(試案)」を発表しました。幾つかの対策案が提案されていますが、これらの政策で少子化=少産化が本当に克服できるのでしょうか。
叩き台ではおよそ30の項目が提案されています。その要点をまとめてみると、下図のようになります。
➀経済的支援の強化
- 児童手当の所得制限を撤廃し、支給期間を高校卒業まで延長する。
- 多子世帯が減少傾向にあり、手当額について見直す。
- 出産費用の保険適用の導入を含め、出産支援のあり方について検討する。
- 地方自治体の子ども医療費助成では、国民健康保険の減額調整措置を廃止する。
- 学校給食費の無償化を検討する。
- 高等教育の貸与型奨学金では、減額返還制度の利用可能な年収上限を引き上げる。
- 授業料等減免および給付型奨学金は、多子世帯や理工農系学生などの中間層に拡大する。授業料後払い制度では、修士段階の学生を対象に導入し、さらなる支援拡充を検討する。
- 公的賃貸住宅に子育て世帯などの優先的入居を進める。
- 住宅金融支援機構が提供する長期固定金利の住宅ローンを多子世帯へ支援する。
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➁子育てサービスの拡充
- 妊娠・出産・子育てまでの「伴走型相談支援」の制度化を進める。
- 国立成育医療研究センターに「女性の健康」に関する中核機能をもたせる。
- 保育士の配置基準を75年ぶりに改善し、さらなる処遇改善を検討する。
- 就労要件を問わず時間単位などで柔軟に利用できる新たな子ども施設を検討する。
- 放課後児童クラブの待機児童の受け皿の拡大を進め、職員配置の改善などを図る。
- 子育て困難を抱える世帯やヤングケアラーなどへの支援を強化する。
- 地域における障害児の支援体制を強化し、地域の連携体制を強化する。
- ひとり親の雇用・人材育成・賃上げに向けて取り組む企業の支援を強化する。
- ひとり親家庭の父母に対する高等職業訓練促進給付金制度をより幅広く対応する。
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③働き方改革の推進
- 男性の育休取得率の政府目標を引き上げる。
- 育休中の給付率を男性、女性とも引き上げる。
- 気兼ねなく育休を取得できる体制作りのため、中小企業へ助成措置を大幅に強化する。
- 子どもが3歳〜小学校入学前までの間の、柔軟な働き方のできる制度を検討する。
- 子どもが2歳未満の期間に時短勤務を選択した場合の給付を創設する。
- 子どもが病気の際に休みやすい環境整備を検討する。
- 週20時間未満の労働者も失業手当や育児休業給付など、雇用保険の適用を拡大する。
- 自営業やフリーランスなどへ、育児期間にかかる保険料免除措置の創設を検討する。
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④意識改革
- 子どもや子育て中の人が気兼ねなく制度やサービスを利用できるよう、社会全体の意識改革を進める。
- 全ての人ができることから取り組む機運を醸成する。
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これらの政策で少子化の克服、つまり出生数の回復はできるのでしょうか。
一読してわかるように、叩き台の30項目のほとんど全てが、先に分析した直接的背景のうちの「夫婦間少産化」に対する対策ということになります。
しかし、過去50年間を振り返ると、1970~2020年の間に、出生数は209万人から84万人へと、40%台に落ちています。
その背景には、女性の出産可能人口(15~49歳)が85%へ、婚姻件数が48%へ、夫婦内少産化が86%へ、それぞれ落ちているという事情がありました。
夫婦内少産化以上に、出産可能人口や婚姻件数の減少が大きく影響していることがわかります。とりわけ婚姻件数の低下が最も強く影響しています。
しかし、今回の少子化対策の叩き台では、婚姻件数への対応はまったく触れられてはおりません。
とすれば、どれほどの効果があるのでしょうか。
莫大な予算を投資する意味が果たしてあるのでしょうか?
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