国連のSDGs(Sustainable Development Goals)に掲げられた17の目標が、世界の人口動態にどのような影響を及ぼすのか、国連の説明に従って、そのインパクトを考えています。
前回は前半の7目標について考えましたので、今回は後半の10目標を検討します。
8.経済成長と雇用・・・「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」
各国の状況に応じ、一人当たり経済成長率を持続させるため、高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどで、多様化、技術向上および技術革新を通じた高いレベルの経済生産性を達成すると、人口容量が維持される傾向が強まりますが、その一方で生活水準の上昇による自己実現願望の上昇で出生率が低下し、人口は減少します。 |
9.インフラ・産業化・イノベーション
・・・「強靱なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」
質が高く信頼できる持続可能かつ強靭な地域・越境インフラなどのインフラを開発し、すべての人々の安価なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援し、2030年までに各国の状況に応じて雇用および国内総生産 (GDP) に占める産業セクターの割合を大幅に増加させると、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。 |
10.不平等・・・「各国内及び各国間の不平等を是正する」
2030年までに年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワーメント、および社会的、経済的、および政治的な包含を促進するため、 差別的な法律、政策、および慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正すると、人口容量は安定化しますが、自己実現願望の上昇で出生率が低下し、人口は減少します。 |
11.持続可能な都市・・・「包摂的で安全かつ強靱で持続可能な都市及び人間居住を実現する」
2030年までに、すべての人々に適切、安全かつ安価な住宅および基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善したり、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者、高齢者などに、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供すると、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。 |
12.持続可能な消費と生産
・・・「持続可能な生産消費形態を確保する」
2030年までに天然資源の持続可能な管理および効率的な利用を達成し、小売・消費レベルにおける一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させると、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。 |
13.気候変動・・・「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」
すべての国々で気候変動に起因する危険や自然災害に対する強靭性および適応力を強化し、 気候変動対策を国別の政策、戦略および計画に盛り込むと、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。 |
14.海洋資源・・・「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」
2025年までに、陸上活動による海洋堆積物や富栄養化をはじめ、あらゆる種類の海洋汚染を防止して大幅に減少させ、 2020年までに海洋および沿岸の生態系の強靭性強化や回復取り組みなどを通じた持続的な管理と保護を行って、大きな悪影響を回避し、健全で生産的な海洋を実現すると、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。 |
15.陸上資源・・・「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」
2020年までに、国際協定下の義務に則って、森林、湿地、山地、および乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系およびそれらのサービスの保全、回復、および持続可能な利用を確保し、あらゆる種類の森林の持続可能な管理の実施を促進し、森林破壊の阻止や劣化した森林の回復で、世界全体で植林と森林再生を大幅に増加させると、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。 |
16.平和・・・「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」
あらゆる場所において、すべての形態の暴力および暴力に関連する死亡率を大幅に減少させ、子どもに対する虐待、搾取、人身売買およびあらゆる形態の暴力および拷問を撲滅すると、死亡率が低下し、人口は増加します。 |
17.実施手段・・・「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」
課税および徴税能力の向上に向けた国際的な支援などを通じて、開発途上国の国内資源の動員を強化し、複数の財源から開発途上国のための追加的資金源を動員すると、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。 |
以上で見てきたように、17目標の影響では、人口増加が5、人口容量維持が10、人口減少が6(ダブり2)ということになります。
とすれば、人口容量を持続(Sustainable)しつつ、人口の幾分減る社会を目ざしている、といえるでしょう。
具体的にいえば、先に述べたように、地球の人口容量を90億人程度に持続可能にしつつ、世界人口を70~80億人へ近づけていくこと、つまり持続微減なのです。
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