2025年11月16日日曜日

言語生成・新仮説・補論・・・言語階層と表現形態

 言語生成論・新仮説」として「言語」という人類の表現装置(言分け装置)を、「深層言語」「象徴言語」「表象言語」の生成状況として考えてきました。

このうち、「深層言語」については、考古学のさまざまな資料に基づき、75万年前ころから進展し始め、3万年前ころにはホモ・サピエンスの間へ浸透していった、と推定してきました。

ところが、これまでの論述について、読者の方々から「言語階層(深層言語・象徴言語・表象言語・交信言語・思考言語・観念言語)」と「言語群(動作言語・音声言語・形象言語・表号言語・文字言語)」の定義が混乱しているのではないか、とのご指摘を受けました。

早速読み返してみると、なるほど「言語」という名称を多発させており、言語の階層と種類が曖昧化するケースもありました。

そこで、「言語」の定義を明確化すべきと考えましたが、この分野については、先学諸賢の見解や理論などはほとんどありません。僭越ながら、関連用語の定義を次のように設定し直しました。


➀人類の「言分け(コトバやシンボルで把握した外界像)」行動には、「言葉」による対象把握に加え、さまざまな「表現形態」による把握もある。つまり、音声、文字に加え、動作、形象、表号の、5つの「表現」である。

それぞれの「表現」行為を「音声表現」「文字表現」「動作表現」「形象表現」「表号表現」と名づける(「表現」という言葉については、なお思考中です)。

➁音声表現と文字表現は「言語表現」であり、動作表現と形象表現と表号表現は「形態表現」である。

➂言語表現には、認識段階に沿って「深層言語」「象徴言語」「表象言語」「交信言語」「思考言語」「観念言語」という、6つの「言語階層」がある。

➃形態表現にも、言語階層と同じく、「深層形態」「象徴形態」「表象形態」「交信形態」「思考形態」「観念形態」という、6つの「形態階層」がある。

以上のように、言語生成・新仮説では、言語行動の定義を音声、文字から動作、形象、表号にまで広げるとともに、それぞれの相互作用による進展過程を柔軟に考察していくことにします。

2025年11月9日日曜日

言語生成・新仮説Ⅴ・・・音声・形象・表号の接近で深層言語が・・・

言語階層における「深層言語」は、52万年前に始まったのではないか、と述べてきました。

深層言語とは、【言語6階層説:深層言語とは・・・】で述べたように、「身分け」が把握したものの、「識分け」が掴む前の無意識(深層心理)的な事象を、イメージや偶像などで表す表現装置です。

身分け」では視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚によって「認知」し、次の「識分け」では形、音、臭い、味、物などと「意識」によって「識知」しています。この「識分け」が「識知」するか否かの、初期の段階を「動作」「音声」「形象」「表号」「文字」の5つの言語群によって「言知」した言語装置が「深層言語」です。

この言語階層、つまり深層言語の生成過程を、言語群の進展過程から大胆に推測してみましょう。

「音声言語」の起源については、前回述べたように「連続性理論=初期起源論」と「不連続性理論=後期起源論」があり、前者では200万年かけて徐々に発達したとし、後者では13.5万年以前説や105万年前説が主張されています。

「形象言語」については、洞窟壁画や石器絵画など原始絵画が該当するとすれば、ほぼ7万年前ころに生まれていた可能性があります。感覚の捉えた対象を視覚的なイメージで表現する行動と理解されますが、このような行動を音声に置き換えようとする可能性も推測できます。とすれば、少なくとも10万年以前から発達してきた「音声言語」が、まずは7万年前ころに生まれた「形象言語」と結びつき、「深層言語(深層階層)」を生み出したとも考えられます。

「表号言語」とは、識知の捉えたイメージを、類似パターン、潜在パターン、模様などで表した石像や石具など表す行為ですが、これらはおよそ3.5万年前ころに現れていた、と推定されています。「形象言語」の対象をさらに具体化したイメージとして表現されていますから、これによって言語階層もまた「深層階層」をいっそう深め、ほぼ完成に至ったものと思われます。 

とすれば、深層言語(深層階層)は7~5万年前ころから、ある程度の形態へ進展し、3万年前ころにはホモ・サピエンスの間へ幅広く浸透していった、と推定されます。

この浸透によって、人類の認識構造に「マナイズム」という時代識知が形成されると、【深層言語マナイズム旧石器文明】で述べたように、約4万年前ころから世界人口の石器前波が徐々に上昇し始めたものと思われます。