2023年2月17日金曜日

少子化=少産化の社会的背景は・・・

少子化少産化対策の効果を計るため、子どもの減る現象、つまり少産化の背景を分析しています。

社会・経済的背景のうち、前回の経済的背景に続き、今回は社会的背景を考えてみましょう。

社会状況では、晩婚・非婚化、核家族化、平均寿命延長、大都市集中などが少産化の原因となっています。

●晩婚・非婚化

結婚に対する意識が大きく変わり、晩婚化や非婚化が進んでいます。


未婚率は男女とも19502000年は徐々に上昇してきたが、2000年以降は大幅に高齢化が進み、特に男性で急上昇している。

4044歳の未婚率は、男性が2000年の18.7%から2020年の32.2%へ、女性が2000年の8.6%から2020年の21.3%へ上がっている。

③その結果、生涯未婚率(50歳時の未婚率)は、男性が19501.5%から202025.7%へ17.1倍、女性は1.4%から16.4%へ11.7倍になった。

結婚に対する価値観の変化は、そのまま少産化の大きな背景となっています。

●核家族化

家族構成の変化により、出産や子育てに対する意識の偏在化も進んでいます。


3世代などの拡大家族は、1970年の23.0%から2015年に9.5%で10%を割り、2020年には8.3%にまで落ちている。

核家族(夫婦や親子だけで構成される家族)は、1970年の56.7%から1980年に60.3%までは増えたが、2020年には55.9%にまで落ちている。

単身世帯は、1970年の20.3%から1995年の25.6%を経て、2020年には35.7%にまで上昇している。

単身者と夫婦のみの合計は、1970年の30.1%から1995年の43.0%を経て、2020年には56.2%と大幅に上昇している。

全世帯の半数以上が無子世帯となったことが、少産化を大きく進めています。

●平均寿命延長

平均寿命の延長で人生の設計が変わってきたことも、少産化を進めています。



女性の平均寿命は、戦前の4449歳から、戦後は1947年の54歳へと上がり、その後も1960年に70歳、80年に79歳、2000年に85歳、2020年に88歳と大幅に上昇しています。

男性の平均寿命も、戦前の4347歳から、戦後は1947年の50歳へと上がり、その後も1960年に65歳、80年に73歳、2000年に78歳、2020年に82歳と順調に上昇しています。

寿命の延長、つまり長寿化の進行によって、結婚年齢が上昇し、出産年齢も上がることで、少産化が進んでいます。

●大都市集中

大都市圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県)では、未婚率が高く、合計特殊出生率が低いため、人口分布でこれらの比重が高まると、少産化を促進することになります。



大都市圏の人口比重は、戦前の2935%から、戦後は1950年に30.2%、60年に35.5%、80年に43.6%、2000年に45.3%、2020年に48.6%上がっている。

50歳時の未婚割合を見ると、男性では兵庫、女性では愛知を除いて、他の7都府県が上位22地域内に入っている。

合計特殊出生率では、兵庫、愛知を除く6地域が全国平均を下回っている。

以上のトレンドによって、大都市化が進めば進むほど、結婚が遅れ、出産が減ることがわかります。

これまで取り上げた4つの社会的事象が、直接的背景にどのように影響するかを整理してみると、下表のようになります。

社会的背景では、結婚・夫婦数減少夫婦内少産化に対し、より強く影響しているといえるでしょう。

2023年2月8日水曜日

少子化=少産化の経済的背景は・・・

少子化=少産化対策がさまざま形で議論されています。

その効果を計るため、子どもの減る現象、つまり少産化の背景を直接的背景、社会・経済的背景、巨視的背景の3次元で整理しています。

背景の構造を一部修正し、次のように改めました。 


前回、直接的背景について考察しましたので、今回は社会・経済的背景をとりあげます。

まずは経済状況で、経済停滞、終身雇用制限界化、貧困層増加、社会保障不安などが少産化に関わってきます。

経済停滞・・・日本の経済状況は、過去30年間、ほぼ横ばいの状態です。

このような経済停滞により、直接的背景では結婚・夫婦数減少や夫婦内少産化において、大きな影響が現れています。

終身雇用制限界化・・・経済停滞に伴って、日本経済を支えてきた終身雇用制も大きく揺れ、若年層の非正規雇用が漸増しています。



非正規労働者(全年齢)の比率は、1991年の男性8.5%、女性37.2%から徐々に上昇し、2021年には男性21.8%、女性53.5%に達している。

2534では、1991年の男性2.8%、女性25.3%から徐々に上昇し、2021年には男性13.9%、女性31.8%に達している。

1524では、1991年の男性21.4%、女性20.3%から徐々に上昇し、2021年には男性48.7%、女性52.4%に達している。

④この間、出生数はほぼ一貫して減り続け、1995年の119万人から2021年には84万人まで落ちている。

終身雇用制限界化は結婚・夫婦数減少に大きく影響したうえ、夫婦内少産化をも進めています。

貧困層増加・・・経済停滞や非正規雇用増加に伴い、貧困層も急増しています。



相対的貧困率(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得の中央値の半分に満たない世帯員の割合)は、1985年の12.0%から2018年には15.4%に上がっている。

子どもの貧困率(相対的貧困の家庭で暮らす18歳未満の子どもの割合)は、1985年の10.9%から乱高下を続けた後、2018年には13.5%に下がっている。

③この間、出生数1991年の122万人から94年に149万人まで増えたが、その後はほぼ一貫して減り続け、21年には84万人まで落ちている。

貧困層増加は結婚・夫婦数減少を引き起こし、さらに夫婦内少産化にも大きく影響しています。

社会保障不安・・・経済停滞、平均寿命上昇などに伴い、公的年金制度に対する信頼性が急減しています。


①年金に「加入したい」層は、年齢が高くなるほどほぼ上昇しているが、「加入したくない」層は低い層ほど多くなる。

②「加入したくない」層は、1829歳や30代で40%に達している。

社会保障不安は、出産適齢人口減少や結婚・夫婦数減少に間接的に影響し、夫婦内少産化にはより強く影響しています。

以上のように見てくると、経済的背景直接的背景に対して、結婚・夫婦数減少、夫婦内少産化、出産適齢人口減少の順に、さまざまな影響を強めている、といえるでしょう。

とすれば、それぞれを改善することが求められますが、いずれも容易なことではないでしょう。どうすればいいのか、さらに考えていきます。