民主主義の政治運営を正常かつ効率よく行うためには、適正な統治機構が必要です。
古代ギリシアの都市国家以降、さまざまな制度が展開されてきましたが、中世の封建社会では、君主や領主など特定個人による専制的統治機構が主流でした。
しかし、17世紀の市民革命で「法の支配」による民主的な政治運営方式が確立されると、ようやく国民の自由や権利を保障する、近代的な統治機構が登場しました。
その形態には大きく分けて、イギリス型の議院内閣制、アメリカ型の大統領制、中国型の社会主義型政治制度があります。
●イギリスの議院内閣制は、18世紀の中葉ごろまでに原型が形成され、1832~1928年に順次参政権を拡大して、議会の国民代表的な性格を実現し、さらに1911年に下院の上院に対する絶対的優越を認めました。これにより、「下院万能の国」といわれるほど、議会を重視する統治機構が成立しました。
●アメリカの大統領制は、1787年の合衆国憲法によって採用されたもので、厳格な三権分立をめざしています。議会と大統領がそれぞれ独立して、互いに抑制と均衡を行うという権力分立制であり、議院内閣制に比べると、行政権と立法権が徹底的に分離されています。
●中国の社会主義型政治制度は、1949年の中華人民共和国成立によって採用された「人民民主共和制」のもとに、労働者・農民階級を代表する共産党がリーダーシップをとる「民主集中制」です。この方式には、中国のように一院制(全国人民代表大会)を採る国と、ロシアのような二院制を採る国がありますが、どちらにおいても資本主義国家における議会制度、自由な立候補制度、複数政党による政権交替制などは採用されていません。
●アメリカの大統領制は、1787年の合衆国憲法によって採用されたもので、厳格な三権分立をめざしています。議会と大統領がそれぞれ独立して、互いに抑制と均衡を行うという権力分立制であり、議院内閣制に比べると、行政権と立法権が徹底的に分離されています。
●中国の社会主義型政治制度は、1949年の中華人民共和国成立によって採用された「人民民主共和制」のもとに、労働者・農民階級を代表する共産党がリーダーシップをとる「民主集中制」です。この方式には、中国のように一院制(全国人民代表大会)を採る国と、ロシアのような二院制を採る国がありますが、どちらにおいても資本主義国家における議会制度、自由な立候補制度、複数政党による政権交替制などは採用されていません。
世界各国の統治機構は、上記3種の政治制度をさまざまに組み合わせて運営されています。例えばドイツやインドは議院内閣制、フランスや韓国は半大統領制、北朝鮮は民主共和制といった具合です。
日本の場合は、第二次世界大戦後の日本国憲法で、イギリス型の議院内閣制が基本として採用されたうえ、司法部に関してはアメリカ型の違憲立法審査権が認められて、民主政治を保障する三権分立制がそれなりに成立しています。
以上のように、現代世界の各国では、間接民主制度を前提にしつつ、それぞれ独自の方式を採り入れた統治機構が導入されています。
しかし、一方ではグローバル化で相互依存が高まり、他方では人口変動や経済変動などで懸案が広がる中で、各国の統治機構にもさまざまな限界が目立ち始めています。
●イギリス・・・多数派国民の意見をそのまま反映する「多数決型」をめざして、二大政党制を生む小選挙区制、下院の優越、政府行政の優位などを進めてきましたが、社会の成熟化に伴って民意が急速に多様化してきたため、多数決方式で一元的な政策を定めることに無理が生じています。しかし、多様な意見を調整する「コンセンサス型」への転換が難しいため、EU 離脱問題に象徴されるように、カオス的な状況が生まれています。
●アメリカ・・・4~8年間は更迭できない大統領制のため、ポピュリズムの拡大に乗って選出されたリーダーでは、次々に暴走が目立ち始めています。グローバル経済の進展に伴う経済停滞や、それによる中産階級の所得低迷などで高まったアメリカ・ファースト主義が、本来の民主主義精神を次第に希薄化させるとともに、統治機構の破綻を浮上させています。
●中国・・・民主集中制を唱える共産党一党支配により、経済規模は大きく拡大しましたが、その背後では貧富格差の拡大、強権的な国民管理、政府高官の腐敗、三権分立の否定など、民主主義の統治機構とはいえないような諸問題が噴出しています。
●日本・・・議院内閣制と三権分立制が採られているにもかかわらず、1990年代以降、小選挙区比例代表並立制への変更、内閣機能や官僚コントロールの強化などで、政権の長期化が進むとともに、国家権力の私物化もまた進みました。その結果、国会の軽視、国民に対する説明責任の放棄、官僚が政権におもねる忖度政治の進行、司法人事へ介入する三権分立の危機など、民主主義の脆弱化が浮上しています。
●アメリカ・・・4~8年間は更迭できない大統領制のため、ポピュリズムの拡大に乗って選出されたリーダーでは、次々に暴走が目立ち始めています。グローバル経済の進展に伴う経済停滞や、それによる中産階級の所得低迷などで高まったアメリカ・ファースト主義が、本来の民主主義精神を次第に希薄化させるとともに、統治機構の破綻を浮上させています。
●中国・・・民主集中制を唱える共産党一党支配により、経済規模は大きく拡大しましたが、その背後では貧富格差の拡大、強権的な国民管理、政府高官の腐敗、三権分立の否定など、民主主義の統治機構とはいえないような諸問題が噴出しています。
●日本・・・議院内閣制と三権分立制が採られているにもかかわらず、1990年代以降、小選挙区比例代表並立制への変更、内閣機能や官僚コントロールの強化などで、政権の長期化が進むとともに、国家権力の私物化もまた進みました。その結果、国会の軽視、国民に対する説明責任の放棄、官僚が政権におもねる忖度政治の進行、司法人事へ介入する三権分立の危機など、民主主義の脆弱化が浮上しています。
以上で述べたように、民主主義を担うはずの統治機構でも、近年ではさまざまな課題が拡大しつつあります。
この背景には、国家の統治機構が普遍化し、固定化するにつれて、政府による統治行動の是非が不問となり、選挙による意思表示が低下するなど、国民主権というべき民主主義の基本がともすれば忘却されつつある、という事情があります。
いいかえれば、国家の役割が急速に複雑化・専門化し、その権力もまた強大化した結果、中央統治機構における三権分立や中央・地方の権力分立などを、単に憲法で保障するだけの政治前提では、本来の民主政治を実現していくことが困難になってきているのです。
このように脆弱化した各国の統治機構を、今回のコロナ禍ははからずも露出させ、ますます混乱の度を深めさせようとしています。
社会的な危機に遭遇した時、私たちに求められているのは、これまでの政治制度や統治機構を柔軟に組み替えて、新たな体制を創り出していくという知恵と勇気を速やかに持つことだと思います。
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