今回は「霊魂」の、③精神性・人格性と④個人・生死性です。
③「霊魂」とは、人間の物質的・身体的特質や機能に対し、精神的・人格的特質や機能を独立の存在としてとらえたものである。
この文章は「霊魂とは、人間の感覚器の捉えた“認知”的世界に対し、人間独自の言語的能力が捉えた“識知”的世界を独立の存在として“分節化”したものである」と言い換えることができます。
周りの環境世界を理解する時、人間は他の動物と同様に“種”に付属した感覚器により、それなりの世界を“認知”していますが、それに加えて人間独自の言語能力により、もう一つ別の世界を“識知”しています。
霊魂とは、こうした二重構造の存在を前提にして、初めて“識知”的世界が出現し、それが精神性や人格性を人類の「集団幻想」として、幅広く定着させたことを意味しているのです。
④「霊魂」とは、人間の身体に宿って彼を生かしているものであるが、その宿り場(身体)を離れても独自に存在しうるものである。
この文章は「霊魂とは、個人の感覚器の捉えた“認知”的世界が消えた後も、個人の言語的能力が捉えた“識知”的世界を引き続き存続させるものである」と言い換えることができます。
「霊魂」の存在によって、次の2つの事象が現れるということです。
一つは、集団と個人という主体の“分節化”です。霊魂の存在によって、人間や人類という集団的主体を分散させ、個人や私人という個々の主体を浮上させます。
もう一つは、生と死という区分の“分節化”です。霊魂の宿る主体の行動について、生存し目覚めている「生体(organism)」の“認知”に加え、死後や夢想の中にも継続する“識知”の「主体(subject)」を、改めて抽出しています。
この2つを数式で表わせば、
霊魂=主体(動体+意思)×(生前+死後)
ともいえるでしょう。
以上のように、③と④の特徴が示しているのは、「霊魂」という観念の発明によって、初めて“識知”的世界が独立し、その世界において個人という主体や生死という観念が浮上したことです。
さらにいえば、そうした観念が当時の人々の間で共通認識となって、いわば「霊魂」という「集団幻想」を定着させた、といえるのではないでしょうか。
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