2019年10月1日火曜日

時代識知としてのアニミズム

アニミズムを、石器後波を創り出した「時代識知」と考える時、「宗教」や「信仰」という先入観はひとまず棚に上げ、その性格や内容をあらためて確認することが必要です。

前回のブログで抽出しておいた、この観念の7つの特徴を、「識知」観の視点から再検討してみましょう。


①アニミズムとは、ラテン語の「気息」とか「霊魂」を意味するアニマ(anima)に由来する造語で、神霊、精霊、霊魂、生霊、死霊、祖霊、妖精、妖怪などさまざまな「霊的存在(spiritual beings)への信仰」を示す観念であり、宗教的な営為の最も原始的な形である。

先に述べた石器前波時代の時代識知と比べてみると、【ディナミズム(dynamism):動体生命観】が、動いている物体の全てに対して「生き物」や「生命」を認めるという、即物的な“識知”であったのに対し、アニミズムはそれらに加えて、さらに「気息」とか「霊魂」を認めるという、より観念的な“識知”です。

 「生き物」や「生命」という概念のうえに、「気息」や「霊魂」という、「意志」や「感情」を付加している、といってもいいでしょう。

その意味では、アニミズムとは「生命」+「意思」を意味することで、物質次元に“人格”的な精神次元を重ねた時代識知なのです。

②当時の人々は、死、病気、恍惚、幻想、とりわけ夢などにおける浮遊体験を省みて、身体から自由に離脱しうる非物質的な実態=「霊魂(soul)」の存在を確信していた。

この文章は「霊魂とは認知”的世界と“識知”的世界の隙間から生まれるものだ」と言い換えることができます。

人間は言語能力を持ったがゆえに、感覚の把握した“認知”的世界と、言語に置き換えられた“識知”的世界の、両世界の間に、微妙に両方の入り混じった、曖昧な世界を生みだしました。

感覚では確かに捉えているものの、言葉では表現できない、未言語的、無意識的な表象次元です。

そこで、人間は言葉に代えて、イメージ、カラー、サウンドなど、非言語的な表象によって、それらを表わそうとします。

それらが表わすのものが、言葉に代わるシンボル(象徴)や、シンボルが絡み合ったミソロジー(神話)ということになります。

これこそ「霊魂」の発生源です。つまり、頭脳の中で言葉にならないまま、自由奔放に浮遊する認識行動を、あえて「霊魂」と名づけたということです。

とすれば、「霊魂」という概念もまた、“識知”的世界の生み出した、一つの結果ともいえるでしょう。




こうした発想の背後には、言語による世界識知が人間集団に共通の認識能力として定着したことによって、「霊魂」的発想が、当時の人々の間に集団幻想仮想現実として広く認められたという事情が読み取れます。

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