生産年齢人口の見直し、AI やロボットの活用、外国人の適切な導入などで、減少する労働力を補って、GDPの規模が維持できるとすれば、人口減少によって生まれるゆとりを活用する、2つめの条件はその公平な分配です。
「人口減少でGDP /人は2倍へ」(2017年5月18日)で述べましたが、現在のGDP水準が維持できれば、1人当たりGDPは伸びていきます。
実際、現在のGDP =500兆円が続けば、国民一人当たりの所得は2015年の393万円から2050年には491万円(1.23倍)、2100年には837万円(2.13倍)へと増えていきます(いずれも実質)。
人口が減る社会では、経済規模が伸びなくても、個々人は豊かになっていくのです。
これを実現していくには、GDPの維持、分配の公平化、移民影響の最小化など、幾つかの条件があります。
「GDPの維持」については、すでに述べてきましたので、2番目は「分配の公平化」です。
いわゆる「経済格差」「所得格差」の問題ですが、これを表す指標として、一般的に使われているのが「ジニ係数」です。
ジニ係数とは、所得がどれくらい均等に分配されているかを、0から1の数字で表す指標であり、0に近いほど格差が少なく、1に近いほど格差が大きいことを示します。
厚生労働省の「所得再分配調査」に基づいて、その推移をグラフ化してみると、下図のようになります。
上の線が雇用者所得や事業所得などを示す「当初所得」、下の線が当初所得から税金と社会保険料を控除し、社会保障給付を加えた「再分配所得」です。
一見してわかるのは、当初所得のジニ係数が1970年代までの縮小傾向を捨てて、1980年代以降は徐々に拡大していることです。とりわけ2000年代に入ると急拡大しています。
これこそ、最近とみに喧伝される「格差拡大」の実態ですが、この傾向が今後も続けば、仮に1人当たりのGDPが増えたとしても、経済的なゆとりを国民全体に浸透させていくことはまず不可能でしょう。
とはいえ、下線の再分配所得のジニ係数は、1980年ころから拡大はしているものの、その伸び方はかなり緩やかで、2005年以降は縮小傾向さえ見せています。これは税と社会保障による格差是正がそれなりに効果をあげていることを示しています。
となると、人口容量のゆとりを国民全体へ配分していくためには、2030~60年代に向けて、次の両面からの対応が求められます。
①雇用者所得の適正化や事業所得への適正課税などにより、所得実態の公正化を進める。
②社会保障などの適正化によって、格差拡大の抑制を進める。
こうした対応によって所得分配が平準化していえば、その分だけ人口回復の可能性が高まってくるものと思われます。
0 件のコメント:
コメントを投稿