ヨーロッパ諸国の合計特殊出生率は2極化しており、その背景については、出産支援策の得失から国民性による選択に到るまで、さまざまな見解が展開されています。
しかし、これらの見解から外れている事象も幾つか指摘されており、単純には説明できないようです。本当の要因は一体どこにあるのでしょうか?
そこで、筆者は「人口容量」という、まったく別の視点から説明してみたいと思います。
まずヨーロッパ主要国の人口の推移と予測を、1970年を基準にして、2100年まで展望してみると、下図のように描けます。
一目でわかるのは人口のピーク時点です。ドイツは2005年前後、スペインは2010年前後、イタリアは2015年前後、そして参考までに加えた日本も2010年前後であり、いずれも21世紀初頭にピークを迎えています。
一方、スウェーデン、フランス、イギリスはなお伸び続けており、ピークに到るのは22世紀以降となる模様です。
人口ピークとは、人口容量の上限を意味していますから、ドイツ、スペイン、イタリアはすでに容量の上限に達した国であり、スウェーデン、フランス、イギリスは未だ容量の上限に達していない国ということになります。
繰り返しますが、人口容量とは【自然環境×文明】ですから、特定の時代の一国の人口容量は【国土の自然環境×現在の文明】で決まってきます。
自然条件や国土環境が類似したヨーロッパの国々であっても、それぞれの自然条件・国土面積・伝統的文化・国民感情など広義の自然条件と、物質的・経済的・社会制度的な広義の文明の組み合わせによって、それぞれの人口容量は自ら異なってきます。
その結果、人口容量の上限に早く達する国と、上限に遅れて達する国が生まれたようです。ドイツ、スペイン、イタリアはすでに容量の上限を経験した国、スウェーデン、フランス、イギリスは未経験の国ということです。
この2極化こそ、合計特殊出生率の2極化の真因ではないでしょうか。
先にあげた「合計特殊出生率で2つに分かれる」のグラフと、上記のグラフを比べてみれば、人口ピークの2グループと合計特殊出生率の2グループがぴったり一致していることがわかります。
とすれば、「合計特殊出生率の2極化の要因は、人口ピーク前後の2極化にある」とも考えられます。人口ピークを経験した国では出生率が低く、未経験の国では出生率が高いのです。
では、なぜ人口ピークの経験の有無が合計特殊出生率の偏差を生み出すのでしょか。次回以降で考えてみましょう。
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