経済人類学者のK.ポランニー(1886~1964)の主張する「互酬制」(Reciprocity)を読んでいると、ロシアの政治思想家、P.A.クロポトキン(1842~1921)の「相互扶助=互恵制(mutual aid)」と比較したくなります。
そこで、クロポトキンの著作『相互扶助論---進化の一要素』(大杉榮訳,1927年刊)によって、その概要を探ってみましょう。
●動物界では、個人的闘争をできるだけ少なくし、相互扶助的な習慣を最も多く発達させている動物の種が、個体数が最も多く、最も繁盛し、且つ最も進歩に適している。 ●相互の保護と、老齢で経験を積む可能性と高度の知識的進歩と社交的習慣の發達は、その種の維持と繁殖と進歩的進化を保障する。だが、非社交的な種は衰微する。 ●人類界では、石器時代の最初から、人々が氏(Gens:部族)や氏族(Clan)で生活をしており、その中で生まれた多数の諸習慣が、その後に進歩して、あらゆる制度の萌芽となった。 ●いかなる先史人の問にも、相互扶助を目的とする人間の協力関係と、同じような種族的生活を見出すことができる。 ●先史人の氏族から野蛮人の共産村落が生まれ出た。民會(議決機関)の支配の下に、共同で土地を所有し防護するという原則を基礎に、共同祖先に属する村落連合という、より広い集団へ拡がった。 ●更に人類は、共産村落という領土的單位と同業組合とを結び付けた都市を創設した。 同業組合とは、ある技術又は工作を共同して営むために造られた集団である。 ●しかし、ローマ帝国のような国家の発達が、あらゆる相互扶助的制度を猛烈に破壊した。けれども、個人の散漫な集合を基礎に、自らが個人の結合の唯一の縁になろうとした国家は、その目的を果す事ができなかった。 ●相互扶助的傾向は再び頭もたげ、無数の団結の中に確立していった。こうした団結は、今や社会生活のあらゆる方面に及び、人類がその生活のために必要な、一切のものの所有を企てている。 (以上は『相互扶助論---進化の一要素』から筆者が抽出・要約) |
クロポトキンは、相互扶助と個人的自律の二つを、人類の基本的な要素と考えていたようです。
中世までは両者が並立してきましたが、近代になるにつれて相互扶助が弱まってきました。
だが、近年になって再び復活している、と言っています。
その主張をさらに検討していきましょう。
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