2018年11月6日火曜日

経済学の循環論とは大きく異なる!

「横軸:逆対数×縦軸:正対数」による人口波動(多段階人口波動曲線)は、歴史観パラダイムの転換を意味するものだ、と述べてきました。

この件については、某研究会に招かれて、統計学の先生方と議論したことがあります。

「人口“波動”」説という筆者の提起に対して、多くの先生方から、経済学で提唱されている「景気循環」論と同じようなものではないか、というご指摘やご批判がありました。

根本的に異なる」と筆者はお答えしましたが、その理由は以下のようなものです。

そもそも「景気循環(Business cycle)とは、経済活動の変化を示す「景気(business conditions)」について、循環的(あるいは周期的)に発生する変動のことで、「景気変動」とか「景気の波」ともよばれているものです。

この波が一定の原因によって、決まった周期で恒常的・法則的に循環する、と主張する理論が「景気循環論」です。

伝統的な景気循環論としては、キチン循環(Kitchin cycles)、ジュグラー循環(Juglar cycles)、クズネッツ循環(Kuznets cycles)、コンドラチェフ循環(Kuznets cycles)の4つが有名で、それぞれ発見者、主張者の名前にちなんで名づけられた波動です。

キチン循環は、主に企業の在庫変動によって発生する、約40か月周期の比較的短いもので、「小循環」とか「短期波動」ともよばれています。

ジュグラー循環は、企業の設備投資に起因する約10年周期の波で、「主循環」とか「中期波動」ともよばれています。

クズネッツ循環は、住宅や商工業施設の建て替えなどが生み出す、約20年周期の波で、「建設循環」ともよばれています。

コンドラチェフ循環は、技術革新によって発生する、約50年の周期の波で、「大循環」とか「長期波動」ともよばれています。

 
これらの「景気循環論」と、筆者の主張する「人口波動説」とはどこが異なるのでしょうか。人口波動説からいえば、根本的な違いは以下の3つでしょう。

①説明変数を「時間的尺度」でなく「文明の転換」においている。

説明変数とは、波動や循環の発生する尺度を意味していますが、「景気循環論」では、いずれの循環も「一定の時間」という時間的尺度によって変化する、とされています。

これに対し、「人口波動説」では、いずれの循環も時間的尺度によるものではなく、新たな文明によって生起するもの、と考えています。

②サイクル、循環の期間は一定ではない。

「景気循環論」では、約40か月、約10年、約20年、約50年と、いずれの循環においてもそれぞれの時間的長さが「一定の時間」として定まっています。

これに対し、「人口波動説」では、さまざまな波動の時間的長さは、超長期から短期まで、それぞれの波動によって独自の長さ持っています。

③一つ一つの進行過程は同型ではなく、独自の進行パターンを持っている。

「景気循環論」では、約40か月、約10年、約20年、約50年と、いずれの循環においてもそれぞれの進行パターンが「一定の形態」を持っています。

これに対し、「人口波動説」では、5つの波動の進行過程がそれぞれ異なっています

このように「人口波動」史観は、従来の「景気循環」史観とはまったく異なるものです。

それは、さまざまな社会・経済予測などで提唱されている、25年周期説、40年周期説、70~80年周期説、400年周期説、1600年周期説などの「時間的周期説」とも、根本的に異なることも意味しています。

「人口波動」説とは、時間・空間を大きく超越した人類史観を意味しているのです。

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