人減先進国の方向を経済的容量の規模で検討しています。
その一つのモデルとして、日本経済新聞(9月4日)がトップに掲げた「家余り問題」を考えておきます。
余剰住宅と人口減少の関係は、ある意味では、人口容量と人口推移の関係を明確に示唆している、といえるからです。
日経新聞の記事「家余り1000万戸時代へ」では、この関係を次のように述べています(要旨)。
①総務省の住宅・土地統計調査によると、日本の住宅総数は2018年時点で約6241万戸であり、23年には最大6546万戸へ増える(野村総合研究所)と見込まれる。 ➁国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の世帯数は2023年に5419万でピークを迎え、以後は減少が始まる。人口が減っても長寿化や生涯未婚率の上昇で一人暮らしが広がり、世帯数は増えてきたが、転機が訪れる。 ③このため、2023年を境に空き家も急増し始め、除却水準が低下した場合、15年後の38年には約2303万戸に達する(野村総合研究所)と見込まれる。 ④政府の住生活基本計画(2021年)によれば、18年時点で居住世帯がある住宅は約5360万戸、うち約700万戸が耐震性不足し、約3450万戸が省エネルギー基準未達である。 ④対応策として、ひとつは既存住宅の有効活用が、もうひとつは解体支援事業の拡大や税制の改正が必要である。 ⑤国家レベルで住宅リストラに取り組まなければ、余剰住宅は空き家のまま朽ちていく。 |
住宅は生活民が生きていくための基本的条件の一つですから、人口容量の主要部分を構成しています。
ほぼ10年間、人口が減り続けているにもかかわらず、2023年に住宅がなお6500万戸、耐震性不足を除いても5800万戸が保持されているのは、住宅容量が継続的に維持されている、ということです。
2023年に世帯数が5400万でピークを越えると、それ以降は400万戸以上の余剰が出てくることになります。
これこそ、人口減少に伴う人口容量の余剰であり、否定的に言えば「無駄」であり、肯定的に言えば「余裕」です。
いいかえれば、人口減少や世帯減少によって、住宅容量には「ゆとり」が出てくるのです。
とすれば、このゆとりを最小限の努力によって維持しつつ、いかにして活用していくか、が問われることになるでしょう。
例えば、すでに進みつつある2地域居住・多地域居住、子育てや長寿化に対応する住み替え居住、ギークワーカー等の地方移住など、マルチハウジング(多住宅居住)へ向かって、柔軟に対応することが可能になってきます。
1970年代に北欧で「Double-housing」、80年代に英語圏で「Multi-habitation」と言われていた居住スタイルです。
住宅は1戸だけというライフスタイルが終り、複数戸を持つことが可能なる、ということです。
つまり、人口減少に伴う人口容量の余剰に対しては、ライフスタイルそのものを、成長・拡大型から飽和・濃縮型へ、つまり「コンデンシング・ライフ(Condensing Life)」へと切り替えて、逆説的に対応していくことが求められるのです。
そうなると、産業対応や住宅政策などについても、根本的な次元からの見直しが必要になってくると思います。
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