2022年4月4日月曜日

サイエンスという識知が工業文明を創った!

5つの人口波動を生み出した時代識知の構造を考察しています。

ディナミズム(dynamism:汎力説)、アニミズム(Animism:汎霊説)、ミソロジー(Mythology:神話)、リリジョン(Religion:宗教)に続いて、今回はサイエンス(Science:科学)です。

科学とは何でしょうか。時代識知という視点から見ると、【科学という時代識知は…】で述べたように、次のような特性を挙げることができます。

①要素還元主義(機械論的自然観)

デカルトやニュートンが創出した「要素還元主義」によって、「全体は要素の集合から構成されている」という視点で「さまざまな分析を行えば、究極的には全体の理解に及ぶ」という思考方法が確立され、科学と応用技術が多彩な次元で結びついた結果、学問や産業の繁栄がもたらされた。

②数字・記号的思考

16世紀以降、ヨーロッパにおいて進展した西洋数学という学問は、「身分け」できる範囲内での自然現象しか分析できないという、人間の思考限界を突破するため、「数字」や「記号」を応用することで数学や物理学・化学などを発展させた。この思考が、洋の東西を問わず、自然現象の解明はもとより、経済現象や社会現象一般にまで幅広く応用されようになり、時代識知の中核となった。

③科学万能主義

科学は自然の実態を探る、唯一の手法であるという視点を基盤に、さまざまな技術を開発、発展させ、人類の生活や生産力を大きく向上させた。これにより、科学、とりわけ自然科学は、この世の一切の問題は解決するものだという意識を拡散させ、工業現波を生きる人々の思考行動の基礎となった。

こうした識知観は、そのほとんどを理知界の知識(思考・観念言語)に準拠した世界観ですが、これによって、人類は新たな人口容量を獲得することに成功しました。

科学的管理による食糧生産、化石燃料の活用によるエネルギー獲得、科学技術の応用による生活物資の生産といった容量の拡大です。



要するに、太陽を初めとする宇宙のエネルギー源を、人類の手によって工学的に獲得し、多様な熱源として利用できるようにしたのです。

とすれば、工業現波を支えているエネルギーとは、宇宙エネルギーを蓄積した、さまざまな物を、多角的に利用しようとする「分散型・無機・有機エネルギー観です。

❶モノを動かす力を「エネルギー」とみなす発想は、15世紀イタリア・ルネサンスに始まり、19世紀初頭に「エネルギー:Energy」という名称で確定された。

19世紀に産業革命で始まった蒸気機関では、熱源として薪や石炭が用いられていたが、19世紀後半にアメリカで石油が発見されると、徐々に石油や天然ガスの比重が高まった。

20世紀に入って、より直接的に熱エネルギーを力学的エネルギーへ変換する内燃機関(エンジンなど)が発達すると、電気動力(モーターなど)も急速に発展し、さらに20世紀中葉に核分裂エネルギーが登場すると、原子力発電として拡大し、核融合炉などの実用化の研究開発も進められるようになった。

❹一方で、1970年代以降、化石燃料系は大気汚染を、核燃料系は高濃度放射能を拡散させるなど、それぞれの限界が現れるとともに、石油や天然ガスなどの化石燃料では資源枯渇が予想されるようになった。

❺このため、風力、太陽光など自然系エネルギーに再び注目が集まり、さらに地熱、波力、海洋温度差などの無機系エネルギーに、バイオマス燃料や生ごみや産業廃棄物などを利用する有機系エネルギーを加えて、さまざまな研究開発が進められるようになった。

以上のように、工業現波の世界では、物理学がリードする諸科学に基づいて、さまざまな無機系エネルギーが利用されてきましたが、最近では有機系エネルギーも加わっています。

こうしたトレンドは、科学という識知が把握した世界像、つまり太陽を初めとする宇宙のエネルギー源を、人類の手で工学的に把握し、多様な熱源として利用しようとする発想といえるでしょう。

科学技術という時代識知によって、宇宙エネルギーを蓄積した諸物を、多角的に利用しようとする「分散型・無機・有機エネルギー観」が生み出され、それによって工業現波が成立した、ということです。

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