この豊かな時代になぜ多死化が進むのでしょうか?
◆生存能力も低下し始めた!(2015年4月4日)
◆直接的抑制装置も作動している!(2015年4月10日)
◆もう一つの間接的抑制:減少促進装置も作動!(2015年4月24日)
◆減少促進策はすでに実施されている!(2015年5月14日)
これらを参照しつつ、人口抑制装置という視点から、改めて多死化の要因を整理してみましょう。
まず「生物的抑制」という視点では、「死亡数の増加」と「死亡率の上昇」があげられ、その背景として「死亡対象年齢層の増加」と「平均寿命延び率の低下」があげられます。それぞれの動向は以下のとおりです。
①死亡数の増加・・・死亡数は、1950年代後半から70年代までは70 万人前後で推移していましたが、1980 年代から増加傾向に転じ、1990年以降は80 万人台、1995年以降はほぼ90 万人台となり、2003 年に100 万人を超え、2007 年に110 万人、2011 年以降は120 万人台となっています。
②死亡率の上昇・・・総人口に対する死亡率も、1950年の10.9‰から1979年に6.0‰で最低を記録した後、上昇に転じ、2003年に8‰を超え、2013年にはすでに10.1‰に達しています。毎年100人に1人が亡くなっているのです。
③死亡対象年齢層の増加・・・75歳以上の人口は、2000年の800万人(7.1%)、2010年の1407万人(11.1%)、2015年の1646万人(13.0%)と急増してきましたが、今後は2020年に1879万人(15.1%)から2030年に2278万人(19.5%)と、さらに比率を上げていく見込です(予測は前掲データ)。
④平均寿命延び率の低下・・・日本人の平均寿命は、1950年の男59.57歳、女62.97歳から、2010年の男79.55歳、女86.30歳を経て、2015年には男80.79歳、女87.05歳と、男女ともに80歳を超えています。
順調に伸びているように見えますが、伸び率をみると、すでに低下に移っています。年間伸び率は、1950年代前半の男1.32%、女1.47%から、1970年代前半の男0.69%、女1.59%、1990年代前半の男1.12%、女1.23%を経て、2010年代前半に男は1.28%とやや回復しましたものの、女は1.12%と徐々に低下しています。
女性がリードしてきた平均寿命にも、今や翳りが見えてきたのです。過去50年間、平均して3年に1歳ずつ伸びてきた平均寿命は、今後は1歳延びるのに5年、その後は9年もかかる、という段階に入っています(予測は国立社会保障・人口問題研究所、2012年推計)。
以上の動向をまとめると、日本列島に住む人口集団では、「死亡対象年齢層の増加」と「平均寿命延び率の低下」によって「死亡数の増加」が起こり、総人口減少に伴って、集団全体で「死亡率の上昇」を招いているということになります。
このうち、最も影響が大きいのは「平均寿命延び率の低下」であり、さらにその背景には「生理的抑制装置の作動」が考えられます。
いいかえれば、日本列島人の生存能力は、すでに低下し始めているのです。
つまり、加工貿易文明の創り出した人口容量、1億8000万人の壁に突き当たったため、修正ロジスティック曲線に沿って、増加から減少へのプロセスを辿り始めているということでしょう。
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