人口回復が最大の政策課題とする論調が、マスメディアなどでは広がっています。
人口抑制装置という視点から見た場合、今回の人口減少の最大要因は出生数の減少よりも死亡数の増加です。
すでに「人口減少の原因は“少子化”である?」(2015年1月6日)で述べていますが、その後の状況を、2010年から2015年までの5年間で調べてみると、次のようになります。
総人口は2010 年の12805万人から2015年の12690万人へと115万人、約1%減っていますが、減少の要因は次のように推定できます(総務庁・人口推計による)。
①自然減(出生者数-死亡者数)は-114万人、社会減(入国者数―出国者数)は-1万人で、減少への影響は99:1の比重です。
②自然減のうち、増減総数に対する比重は、出生者減少は45%、死亡者増加は55%です。
③両者を勘案すると、減少要因の比重(総数100)は、出生数減で44% 、死亡数増で55%、社会減は1%となります。
以上のように、人口減少の最大の要因は死亡者の増加、つまり「多死化」です。
とすれば、人口増加対策としてまず行わなければならないのは、死亡者の減少、つまり「多死化」の低下対策であるはずです。
ところが、実際の政策では、後期高齢者医療制度の負担増、介護保険料の負担増、介護保険・特別養護老人ホーム等費用の負担増など、長寿者の生活を圧迫することで、結果的には死亡者を増やす方向が採用されています。
これでは死亡数もまた増えるばかりで、多少、出生数が回復したとしても、人口が増加することはまずありえません。
以上の背景には、「若年層が長寿層の生活を助ける」という、人口増加=成長・拡大型の社会にできあがった、ヨーロッパ型の社会保障制度を絶対無二の大前提として、「長寿者の増加による人口増加は好ましくない」というドクサ(臆見)があるからだと思います。
今、人口減少社会で求められているのは、自立した長寿者の増加を前提とする、新たな社会制度の確立なのではないでしょうか。
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