これまで述べてきたことを整理してみると、石器前波後期には人口減少社会の原型ともいえる特徴が潜んでいます。
何度も述べてきたとおり、一定地域の人口は、人口容量の余裕がある時は増加しますが、余裕がなくなってくると、人口抑制装置が作動して減少していきます。この視点から、石器前波の増減過程を整理してみましょう。
- 石器前波の人口容量は【日本列島の自然環境×旧石器文明】で示され、先に述べたように、約3万人と推定されます。
- 3万年前頃から増え始めた人口は、2.5万年前頃に1.5万人となり、2万年前を過ぎたあたりで人口容量の限界に達したため、停滞していきます。
- 人口容量が限界化した背景には、①自然環境の変化と②石器文明の限界化の、両面からの影響があります。
- 日本列島の自然環境は、2万年頃から地球寒冷化の影響を受けて、世界波動の停滞と連動するように、徐々に悪化しています(下図)。
- 旧石器文明は【磨製石刃→ナイフ形石器→槍先形尖頭器→細石器】と進展し、それにつれて狩猟採集をベースとする人口容量を徐々に拡大させてきましたが、槍先形尖頭器に到ったところで、寒冷化の影響も受けて、それ以上の拡大はもはや無理な状態に至りました。いいかえれば、細石器は画期的な技術として伝播してきたにもかかわらず、人口容量の維持拡大にはもはや役立たず、むしろ文明の精緻化・濃縮化を先導したものと思われます。
- その結果、石器前波の人口は、1.5万年前頃から減少し始め、1万年前頃には2万人を割ったと推定されます(下図)。
このように整理すると、石器前波の増加理由と減少理由が明らかになるとともに、人口が減少した、古い時代の特性をつかみだすことが可能になります。
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