「言語生成論・新仮説」の2番めは、「象徴言語」の生成状況です。
象徴言語とは、【言語6階層説:深層言語とは・・・】で述べたように、「身分け」が把握し、「識分け」が捉えた事象を、とりあえず擬声語や擬態文字、イメージや偶像などで表した言葉です。
意識が把握したものの、表象言語が形成される前の始原的な言葉として、モノコト界でゆらゆら浮遊している言語と言ってもいいでしょう。
前回述べたように、「身分け」次元では、五感で「認知」した対象を、「動作」「音声」「形象」「表号」「文字」の5つの「深層言語」によって「言知」していました。
今回の「識分け」次元でも、5つの深層言語が捉えた対象を、明確に「言分け」する前の段階で、動作、音声、形象、表号、前文字などに「識知」します。ここで生まれる言葉が「象徴言語」です。
それゆえ、象徴言語にも、動作言語、音声言語、形象言語、表号言語、文字言語の全てが含まれています。
➀動作言語:body language・・・ゆるゆる腕振り、あれこれ指振り 流れる渓流に触れて、体感を確かめるため、ゆらゆらと指を揺らす前言語行動です。 ➁音声言語:onomatopée:オノマトペ・・・チャブチャブ、どろどろ 流れる渓流のせせらぎを聴いて、チャブチャブとオノマトペ(擬声語)を発します。 ➂形象言語:archetype:アーキタイプ(元型)・・・心像イメージ、無意識的イメージ 渓流の伸びやかな姿を、C.G.ユングが提唱した、無意識下のイメージのように、心の中に思い浮かべます。 ➃表号言語:latent pattern・・・潜在パターン、類似パターン 渓流のくねくねと曲がる流れを、単純化したパターンとして、心の中に思い浮かべます。 ➄文字言語:mental symbol:心象文字・・・原文字、絵文字 渓流のくねくねをパターン化したうえ、さらに単純化した記号に変えます。 |
以上のように象徴言語の生成過程を読み解くと、「身分け」と「識分け」が捉えた現象を、「言分け」する前の、おぼろげな形象言語に置き換えるとともに、一方では動作言語や音声言語と、他方では表号言語や文字言語とも結び合わせ、次回で述べる表象言語への橋渡しを準備していることがわかります。
井筒俊彦先生の「言語阿頼耶識」論を、音声や文字から動作や形象などにまで広げた多次元仮説として提案したいと思います。