象徴言語に続き、表象言語の成立過程を考えています。
表象言語とは、【言語生成・新仮説Ⅲ・・・表象言語】で述べたように、人類が「身分け」し、「識分け」した対象を、コトバやシンボル(絵や形)によって「言分け」する行為です。いいかえれば、意識が把握し、モノコト界でゆらゆら浮遊している象徴言語を、より明確なコトバやシンボルに置き換え、コト界を創り上げるコトバ、といってもいいでしょう。
このような表象言語は、何時ごろ形成されたのでしょうか。
音声表現として何時頃現れたのか、明確な史的証拠は不明です。音声表現の進展過程については、物理的な証拠は消えていますし、推定する方法もないからです。
それゆえ、形象表現や文字表現の側面から見るしかありませんが、これらでは次のような進化が確かめられています。
➀岩絵・ペトログリフ(petroglyph)・・・岩石や洞窟の壁面に形や文字らしきものを刻んだ彫刻ですが、紀元前1万年と推定されるウクライナの「カメンナヤ・モグリャ」遺跡に始まり、紀元前9000~7000年頃には絵文字や表意文字のようなものへ進んでいます。 ➁音声表現から文字表現へ・・・紀元前9000~7000年頃に始まった絵文字や表意文字が進歩するにつれて、紀元前4000年ころまでの約4000年間に音声表現を文字表現へ置き換える動きが高まり、やがて古代文字を生み出しています。 ➂古代文字の誕生・・・紀元前3500年頃には、さまざまなピクトグラム(pictogram:絵文字)が登場しています。
➃古代神話の発生・・・紀元前3000年頃になると、文字の進化によって神話が記録されるようになります。
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以上のように、形象表現や文字表現が進むにつれて、人類の表現行動も象徴言語から表象言語へと進化していきます。
表象言語の浸透によって、共同体の内部での交信機能が高まるとともに、世界認識の方法としても「ミソロジー(神話)」という「時代識知」が広がっていきます。
ミソロジーによって初期農耕という文明が生み出され、3つめの人口波動「農業前波」が始動しました。

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