新しい年齢区分の適用で生産年齢人口を56%台で維持し、さまざまな労働参加策の向上によって労働力率を60%台に引き上げることができれば、GDPの維持はさほど困難なことではありません。
しかし、労働力人口が減っていくことは避けられませんので、もう一方では、労働者1人当たりの生産性を上げていくことが必要になってきます。私たち日本人の労働生産性は現在、どの程度なのでしょうか。
(公財)日本生産性本部の「労働生産性の国際比較」(2016年度版)によると、次のように位置づけられています。
①日本の労働生産性(2015年)は74,315ドル(783万円)で、OECD加盟35カ国中22位、カナダ (88,518ドル/932万円)や英国(86,490ドル/911万円)をやや下回り、米国(121,187ドル/1,276万円)の概ね6割程度である。
②日米間の生産性格差は、両国企業の価格戦略の違いに影響されている。
日本企業では小売や飲食、製造業などを中心に、1990年代からのデフレに対応して業務効率化を進め、利益を削ってでも低価格化を実現するという戦略で競争力を強化してきた。
一方、米国企業では生産性の向上によって付加価値を拡大させ、高価格を実現してきた。
こうした両国間の戦略差が生産性の格差を生みだしている(米・コロンビア大学:H.パトリック教授)。
③日本の生産性を向上させるためには、米国で急成長している配車サービス「ウーバー」のような、IT技術をミックスしたサービスの開発が求められる。
米国ではIT技術によるイノベーションがさまざまな産業分野で、新たな付加価値を創出する原動力となって、生産性の向上にもつながっている(米・ハーバード大学:D.ジョルゲンソン教授)。
④日本が米国など主要国との格差を縮めるには、業務の効率化を進めるだけでなく、新しいサービスや製品を生み出して、付加価値を上げることが必要である。
以上のように、日本の労働生産性は今後、大きく改善される可能性があります。
とりわけ、IT技術、AIやロボットなどの導入によって、生産年齢人口や労働力人口の減少をカバーできる可能性はますます広がっていくでしょう。
2017年6月28日水曜日
2017年6月20日火曜日
労働力人口を維持するには・・・
生産年齢人口の減少が避けられないとすれば、労働力人口を可能な限り増やしていくことが必要です。
労働力人口とは、15歳以上の人口から非労働力人口(主婦や学生など労働能力はあっても働く意思をもたない者、あるいは病弱者や老齢者など労働能力をもたない者)を差し引いた人数です。
この労働力人口が15歳以上人口に占める比率が労働力率です。
労働力人口と労働力率の推移を振り返ってみると、下図のようになります。
労働力人口とは、15歳以上の人口から非労働力人口(主婦や学生など労働能力はあっても働く意思をもたない者、あるいは病弱者や老齢者など労働能力をもたない者)を差し引いた人数です。
この労働力人口が15歳以上人口に占める比率が労働力率です。
労働力人口と労働力率の推移を振り返ってみると、下図のようになります。
人口増加に伴って、労働力人口は2010年ころまで順調に伸びてきましたが、1990年代以降は労働参加率の低下によって、2000年ころから減少してきました。
しかし、2010年以降、女性や高齢者の労働参加が進み始めたため、2015年には幾分回復していきました。
前回見たように、生産年齢人口(15~64歳)は今後、年齢区分を見直したとしても、なお急減していきます。
とすれば、生産力を維持するには、労働力率をさらに上げていくことが求められます。
労働政策研究・研修機構の「労働力需給の推計・2016年版」によれば、下図のように労働力率を現在の59%台から2020年には60.2%へ、2030年には60.8%へと上げていきことができれば、労働力人口は現在の6580万人台から、2020年には6589万人、2030年には6362万人まで維持していけるものと推測しています。
しかし、2010年以降、女性や高齢者の労働参加が進み始めたため、2015年には幾分回復していきました。
前回見たように、生産年齢人口(15~64歳)は今後、年齢区分を見直したとしても、なお急減していきます。
とすれば、生産力を維持するには、労働力率をさらに上げていくことが求められます。
労働政策研究・研修機構の「労働力需給の推計・2016年版」によれば、下図のように労働力率を現在の59%台から2020年には60.2%へ、2030年には60.8%へと上げていきことができれば、労働力人口は現在の6580万人台から、2020年には6589万人、2030年には6362万人まで維持していけるものと推測しています。
要するに、15歳以上の国民にできるだけ働いてもらえるよう、さまざまな対策を展開する必要がある、ということです。
具体的に言えば、女性や高齢者・障碍者などがいっそう労働に参加できるように、働き方の改革や雇用制度の改革などを積極的に進めていくことでしょう。
①女性の参加率拡大については、ダイバーシティ経営の実践や促進、待機児童解消対策の強化、産休・育休制度の拡張など、女性が働きやすい体制造りが求められます。
②高齢者の参加率改善については、65歳以上まで働ける雇用体制の拡大、ハローワークなどでの生涯現役支援体制の拡大、体力に見合った雇用体制の拡大などが求められます。
人口減少に伴う生産力の減少に対応していくには、まずは以上のような労働力率の上昇が求められます。
具体的に言えば、女性や高齢者・障碍者などがいっそう労働に参加できるように、働き方の改革や雇用制度の改革などを積極的に進めていくことでしょう。
①女性の参加率拡大については、ダイバーシティ経営の実践や促進、待機児童解消対策の強化、産休・育休制度の拡張など、女性が働きやすい体制造りが求められます。
②高齢者の参加率改善については、65歳以上まで働ける雇用体制の拡大、ハローワークなどでの生涯現役支援体制の拡大、体力に見合った雇用体制の拡大などが求められます。
人口減少に伴う生産力の減少に対応していくには、まずは以上のような労働力率の上昇が求められます。
2017年6月7日水曜日
生産年齢人口を維持するには・・・
労働力人口の基礎となる生産年齢は、これまで15~64歳とされてきました。
平均寿命の延長に伴って、この区分を見直すとすれば、前回述べたように、下限を25歳へ、上限を74歳へと上げていくことが必要です。
しかし、一度に上げるとなると、さまざまな支障が予想されますから、2015年から2055年の40年の間に徐々に上げていく、という手法が考えられます。
下限も上限も毎年0.25歳ずつ上げていくということです。
国立社会保障・人口問題研究所の2017年推計に、この変更を適用してみると、実数では下図のようになります。
従来の定義による生産年齢人口(15~64歳)は、2015年の7728万人から、2035年には6494万人、2055年には5028万人へと落ち、以後も徐々に減って、2100年には3073万人、2115年には2592万人まで落ちていきます。
新たな定義(40年間漸上)では、2015年の7728万人から、2035年には6758万人、2055年には5491万人へと落ち、2100年には3379万人、2115年には2859万人まで減っていきます。
両者を比較してみると、新定義では2035年で264万人、2055年で463万人、2100年で306万人、2115年で267万人ほど増えることになります。
このように新定義にすれば、生産年人口の減少傾向を幾分か緩和することができます。しかし、総人口の減少による生産年齢人口の急減までを止めることはできません。
総人口がここまで減るとは思いませんが、それでも減ることは間違いありませんから、やむをえないことだと思います。
とはいえ、減っていく人口に見合った生産年齢人口の比率を考えると、新定義はそれなりに意味があります。
上記の実数を年齢別構成比で示すと、下図のように変化していくからです。
従来の定義による生産年齢人口(15~64歳)は、2015年の60.8%から、2035年には56.4%、2055年には51.6%へと落ち、以後は横ばいとなって、2100年には51.5%、2115年には51.3%になります。
新たな定義(40年間漸上)では、2015年の60.8%から、2035年には58.7%、2055年には56.4%へと落ちますが、以後は横ばいとなって、2100年には56.7%、2115年には56.5%になります。
新定義を採用すれば、2035年で2.3%、2055年で7.1%、2100年で5.2%、2115年で5.2%と、それぞれ生産年齢人口の比率を上げることができる、ということです。
要するに、総人口が減っていく以上、労働力人口の減少もやむをえませんが、生産年齢の定義を徐々に上げていけば、生産年齢人口の比率を2050年代までに4%落とすだけで押しとどめ、以後は22世紀の初めまで56%台で安定化させることができるのです。
平均寿命の延長に伴って、この区分を見直すとすれば、前回述べたように、下限を25歳へ、上限を74歳へと上げていくことが必要です。
しかし、一度に上げるとなると、さまざまな支障が予想されますから、2015年から2055年の40年の間に徐々に上げていく、という手法が考えられます。
下限も上限も毎年0.25歳ずつ上げていくということです。
国立社会保障・人口問題研究所の2017年推計に、この変更を適用してみると、実数では下図のようになります。
従来の定義による生産年齢人口(15~64歳)は、2015年の7728万人から、2035年には6494万人、2055年には5028万人へと落ち、以後も徐々に減って、2100年には3073万人、2115年には2592万人まで落ちていきます。
新たな定義(40年間漸上)では、2015年の7728万人から、2035年には6758万人、2055年には5491万人へと落ち、2100年には3379万人、2115年には2859万人まで減っていきます。
両者を比較してみると、新定義では2035年で264万人、2055年で463万人、2100年で306万人、2115年で267万人ほど増えることになります。
このように新定義にすれば、生産年人口の減少傾向を幾分か緩和することができます。しかし、総人口の減少による生産年齢人口の急減までを止めることはできません。
総人口がここまで減るとは思いませんが、それでも減ることは間違いありませんから、やむをえないことだと思います。
とはいえ、減っていく人口に見合った生産年齢人口の比率を考えると、新定義はそれなりに意味があります。
上記の実数を年齢別構成比で示すと、下図のように変化していくからです。
従来の定義による生産年齢人口(15~64歳)は、2015年の60.8%から、2035年には56.4%、2055年には51.6%へと落ち、以後は横ばいとなって、2100年には51.5%、2115年には51.3%になります。
新たな定義(40年間漸上)では、2015年の60.8%から、2035年には58.7%、2055年には56.4%へと落ちますが、以後は横ばいとなって、2100年には56.7%、2115年には56.5%になります。
新定義を採用すれば、2035年で2.3%、2055年で7.1%、2100年で5.2%、2115年で5.2%と、それぞれ生産年齢人口の比率を上げることができる、ということです。
要するに、総人口が減っていく以上、労働力人口の減少もやむをえませんが、生産年齢の定義を徐々に上げていけば、生産年齢人口の比率を2050年代までに4%落とすだけで押しとどめ、以後は22世紀の初めまで56%台で安定化させることができるのです。
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