ところが、2000年前後にこの人口容量は満杯になりました。その理由はどこにあるのでしょうか。
直接的には、加工貿易文明の前提にある、国際的な産業環境の変化です。つまり、20世紀の国際環境では、工業国が少なく資源・農業生産国が多いという状況の中で、工業製品は高く売れ、資源や農業産品など一時産品は比較的安く買えました。
しかし、21世紀に入ると、工業国が増加し、資源・農業生産国が減少する傾向が強まっており、それにつれて、工業製品の価格は次第に下がり、一次産品の価格は上昇するという「農高工安」の傾向が進み始めています。
こうした環境変化が進むにつれて、工業製品を高く売って一次産品を安く買うという方法では、1億2800万人以上の人口を養うことが次第に困難になってきました。
これが直接的な理由です。だが、それだけではありません。深層を探っていくと、もっと根本的な理由に行きつきます。
それは現代日本の加工貿易体制を支えている、3つの柱、つまりハイテク化、日本型市場主義、グローバル化のそれぞれに、今や大きな壁にぶつかり始めたという事実が浮かんできます。
詳しくは後述しますが、基本的な状況は次の3つです。
①ハイテク化の限界・・・最大の機軸である西欧型科学技術は、地球単位という次元で、資源・環境の壁に突きあたっています。一方では、化石燃料の限界化が迫り、他方では地球温暖化問題や水資源の汚染や枯渇化が拡大しています。
②日本型市場主義の限界・・・欧米の市場主義を自国なりに変換して構築した日本型市場主義もまた、基本モデルである市場原理主義の破綻という事態に直面し、進むべき方向を失いつつあります。
③グローバル化の限界・・・当然の前提になっている国際化でさえも、世界の利害と直結したことで、プラス面とともにマイナス面の影響を拡大させています。食糧・資源・エネルギーの高騰はもとより、廉価な工業製品の大量輸入、あるいは国際紛争や経済不況の波及など、単純なグローバル化信仰では解決できない課題が徐々に広がりつつあります。
以上のように、現代日本の人口容量は、もはやこれ以上の拡大を望めないところにきています。
これこそ加工貿易文明の限界、つまりそれが作り出した人口容量の壁です。こうした壁に突き当たったため、日本の人口もまた減り始めているのです。
人口減少とは、現代の日本社会そのものが大きな転換点にさしかかっているという、まさしく歴史的、文明的な現象といえるでしょう。
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