石器前波を作り出した旧石器文明の進展過程を整理すると、人口減少の背景がおぼろげながら浮かんできます。
1.【磨製石刃→ナイフ形石器→槍先形尖頭器→細石器】という石器技術の進展過程は、単体石器から複合石器への移行を示しています。磨製石刃は単体利器ですが、ナイフ形と槍先形は単体石器と木材という補助具の組み合わせ利器であり、細石器になると幾つかの細片と多様な形の木材という複合利器に移行しています。
2.この過程は人間の能力の進展過程を象徴しています。磨製石刃の使用は、掌や腕だけでは扱えなかった対象物を割ったり砕けるようにし、ナイフ形石器の使用では、指先により対象物の細かな切削が可能になりました。槍先形尖頭器になると、それまで届かなかった、遠くの対象物への攻撃や到達が可能となり、細石器に至ると、鋭利な刃先をさまざまな形の指示具に埋め込むことによって、槍、鎌、剣などの多様な利器を使うことができるようになりました。こうした過程は、下図に示したように、人間の人体イメージの拡張過程ととらえることができます。
3.人類に特有の環境対応能力は、先に述べたように、言葉(コト)作りと道具(モノ)作りが一体化、あるいは連動化したものとして発達してきました。この視点から石器技術の発展過程を振り返ると、「1つの単語で1つのモノを表す」段階から、「2つの単語で1つのモノを表す」段階を経て、「幾つかの単語を繋げた文章でさまざまなモノを表す」段階への変化ということができます。下図でに示したように、【単語:単体】から【主語+簡易述語】へ、さらに【主語+洗練述語】から【複数の単語+述語+形容詞・副詞】へと徐々に進展してきたといえるでしょう。
このように整理すると、文明や技術の進展と人口増減の関係が推測されます。つまり、石器前波の人口は1.5万年前頃から減少し始め、1万年前頃には2万人を割ったと推定されますが、その理由として考えられるのは、先に述べたように、①気候の寒冷化、②石器文明の停滞、の2つでした。
いいかえれば、石器前波の人口容量を作り出してきた石器技術が、高度な水準に達したものの、その効果を打ち消すほど強力な寒冷化にはもはや対処できなかった、ということでしょう。
視点を変えると、一つの人口波動を生み出す文明もまた、前半の内は人口容量を拡大させはするものの、後半に入って、より高度な段階に達するにつれて、もはや容量の拡大よりも技術そのものの精緻化や言語化(情報化)の方向へ向かっていったということです。
こうしたプロセスには、人口増加・減少社会の根本的な原型が潜んでいるのではないでしょうか。
2016年1月15日金曜日
2016年1月8日金曜日
人口減少社会の原型を探る!
これまで述べてきたことを整理してみると、石器前波後期には人口減少社会の原型ともいえる特徴が潜んでいます。
何度も述べてきたとおり、一定地域の人口は、人口容量の余裕がある時は増加しますが、余裕がなくなってくると、人口抑制装置が作動して減少していきます。この視点から、石器前波の増減過程を整理してみましょう。
- 石器前波の人口容量は【日本列島の自然環境×旧石器文明】で示され、先に述べたように、約3万人と推定されます。
- 3万年前頃から増え始めた人口は、2.5万年前頃に1.5万人となり、2万年前を過ぎたあたりで人口容量の限界に達したため、停滞していきます。
- 人口容量が限界化した背景には、①自然環境の変化と②石器文明の限界化の、両面からの影響があります。
- 日本列島の自然環境は、2万年頃から地球寒冷化の影響を受けて、世界波動の停滞と連動するように、徐々に悪化しています(下図)。
- 旧石器文明は【磨製石刃→ナイフ形石器→槍先形尖頭器→細石器】と進展し、それにつれて狩猟採集をベースとする人口容量を徐々に拡大させてきましたが、槍先形尖頭器に到ったところで、寒冷化の影響も受けて、それ以上の拡大はもはや無理な状態に至りました。いいかえれば、細石器は画期的な技術として伝播してきたにもかかわらず、人口容量の維持拡大にはもはや役立たず、むしろ文明の精緻化・濃縮化を先導したものと思われます。
- その結果、石器前波の人口は、1.5万年前頃から減少し始め、1万年前頃には2万人を割ったと推定されます(下図)。
このように整理すると、石器前波の増加理由と減少理由が明らかになるとともに、人口が減少した、古い時代の特性をつかみだすことが可能になります。
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