集約工業文明とは、どのようなものになるのでしょうか。
旧石器時代の人間が新石器時代を、奈良時代の人間が江戸時代を、それぞれ予想するのは困難であったように、粗放工業時代に生きている私たちが、集約工業時代を予想することは、やはり困難なことです。
旧石器時代の人間が新石器時代を、奈良時代の人間が江戸時代を、それぞれ予想するのは困難であったように、粗放工業時代に生きている私たちが、集約工業時代を予想することは、やはり困難なことです。
しかし、粗放工業文明の諸要素を解体してみると、その方向がおぼろげながらも見えてきます。
おそらくそれは工業前波を支えていた科学技術、市場経済制度、国際協調主義の3つを大きく変えていくことになるでしょう。
その方向を大胆に見通すとすれば、「粗放科学技術から集約科学技術へ」、「粗放市場経済から集約市場経済へ」、「無制約国際化から選択的国際化へ」という変化に集約できます。
◆粗放科学技術から集約科学技術へ
現代の科学技術は、化石燃料を〝爆発〟させてエネルギーを獲得するという、ある意味では〝粗暴〟な基盤に基づいています。パソコンやインターネットなどのソフトな技術でさえ、爆発エネルギーの提供する電力が途絶えれば、直ちに停止してしまいます。
それゆえ、次の文明を支える科学技術は、もっと緩やかに抽出できるエネルギー源に基礎をおかなければなりません。
この方向を実現するにはさまざまな対応が考えられますが、太陽光、風力、水力、地熱などのエネルギーを直接採集して集約する、より「柔らかな」自然系エネルギーへの転換が一つの方向になるでしょう。
つまり、「太陽エネルギーが長期的に蓄積された化石燃料などを採集・消費する」文明をさらに進展させて、「採集圏域を増やして、化石燃料などをより効率よく採集するとともに、エネルギーの集約や育成を図る」文明へと転換していくということです。
◆粗放市場経済から集約市場経済へ
現在の市場主義は、グローバル市場主義の乱暴な介入に国内経済が引っかき回されたり、競争激化によって貧富の格差が拡大するなど、いわば「粗暴な市場経済」の次元に留まっています。
おそらく工業後波を支える経済制度はこうした欠陥を是正して、国際性と国内性の調和、市場性と象徴性の調和、そして価値と効能(私的有用性)のバランスなどに配慮した、より「柔らかな」体制をめざすことになるでしょう。
◆無制約国際化から選択的国際化へ
これまでの国際主義は、一国の国境を絶対視しつつ、そのうえでどの国とも平等につきあうという、いわば「粗っぽい国際主義」でしました。
しかし、今後はその方向が微妙に修正されていきます。21世紀の地球では人口が爆発的に増加して、2020~2030年ころには食糧・資源・エネルギーが不足し、環境汚染も深刻化します。このため、先進国、途上国を問わず、世界各地で物資の奪い合いや環境汚染のなすり合いなど、さまざまなパニックの発生するおそれが急速に高まります。
そこで、日本もまた、従来の野放図な全面的国際化を修正し、農業国との連携や資源保有国とのタイアップなど、互いに援助しあえる国々との間で、新たな連携をめざす選択的国際化を進めることが必要になってきます。その意味で、日本の外交目標は、無制約国際化から選択的国際化へと転換していかなければなりません。
21世紀後半から22世紀にかけての文明は、以上のような形で、現在とはかなり異なる方向へ向かう可能性があると思います。