2020年1月25日土曜日

「宗教(リリジョン:religion)」とは何か?

宗教とは一体、何でしょうか?

宗教:(リリジョン:religion)という言葉は、ラテン語の「レジジオ:religio」に由来しています。

さらにその語源として、「relegere説:再び拾う、再読、反復」と「religare説:強く結びつける、再び結びつける」の2説がありますが、両方とも「superstitio(迷信)という言葉と対立する意味で用いられています。


その結果として「religio」が「神々と我々の魂を“再び結びつける”」という意味を持ったものと推定されています。

日本語の「宗教」という言葉も、古くから漢訳仏典で使われていましたが、明治時代になって欧米語の「religion」の公式訳語として採用された結果、一般用語として普及してきました。

こうした経緯により、現在の日本では、「宗教」という言葉を「超自然的な力や存在に対する信仰と、それに伴う儀礼や制度」と解するのが、一番簡明な定義のようです。

もっとも学説となると、世界各国において、宗教者、哲学者、宗教学者、神学者、心理学者、社会学者などにより、まさに百家争鳴の状態であり、ゆうに100を超えるほど、多数の定義が試みられています。





さまざまな著作や事典などで、代表的な定義を列挙してみましょう。

F.シュライエルマッハー(ドイツの神学者:1768~1834年)・・・宗教とは「ひたすらなる依存感情」である(『神学通論』)。

M.ミュラー(イギリスの比較宗教学者:1823~1900年)・・・宗教とは「無限なるものを認知する心の能力」である(『比較宗教学の誕生 - 宗教・神話・仏教』)。

C.P.ティーレ(オランダの神学者:1830~1902年)・・・宗教とは「神と人間との関係」、あるいは「人間の原初的、無意識的、生得的な無限感覚」である(『宗教学原論』)。

E.デュルケーム(フランスの社会学者:1858~1917年)・・・宗教とは「聖なる事物に関する信仰と行事との連帯的体系であって、これに帰依するすべての者を教会という同一の道徳的共同社会に結合させるもの」である(『宗教生活の原初形態』)。

C.ギアツ(アメリカの文化人類学者:1926~2006年)・・・宗教とは「存在の一般的秩序に関する概念の体系化」である(The Religion of Java)。

以上のような諸説を踏まえて、幾つかの事典などでは、さらに詳細な定義が提起されています。
 
●宗教とは、人間の力や自然の力を超えた存在を中心とする観念であり、その観念体系に基づく教義、儀礼、施設、組織などをそなえた社会集団である(『世界宗教事典』)。

●宗教とは、日常の経験によっては証明不可能な秩序が存在し、人間は神あるいは法則という象徴を媒介としてこれを理解し、その秩序を根拠として人間の生活の目標とそれを取り巻く状況の意味と価値が普遍的、永続的に説明できるという信念の体系をいう(『日本大百科全書』)。

●宗教とは、神仏などの超自然的な力や存在に対する信仰、教義、儀礼、組織などをいう(『百科事典マイペディア』)。

●宗教とは、本来自明ではない超自然的な存在に関わる事柄を、自明なものに変換し、人々をそのように振る舞わせる社会的装置である(『知恵蔵』)。

以上のように、諸説紛々たる状況ですが、このブログではあくまでも「時代識知」という観点から「宗教」の特性や本質などを見定めていきたいと思います。

2020年1月18日土曜日

農業後波はリリジョンが作った?

農業前波を生み出した「ミソロジー(mythology)=「リレーショナズム(relationalism)の後で、新たに農業後波を作り上げた時代識知とはどのようなものだったでしょう。

農業後波は「集約農業文明」によって生まれた、AD400年頃からAD1400年に至る、約4億5000万人の波であり、この時代の人類はいわゆる「宗教(リリジョン:religion)の発生によって世界を見つめ直してきたと思われます。

宗教というと、シャーマニズム、アニミズム、ミソロジーなど、原始的宗教から始まるという言説もまた流布していますが、これらについては別の時代識知としてすでに詳述していますので、新たな時代識知として考えるのは、現代にまで強く継承されている、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教、イスラム教の、4大宗教に絞ることにします。


仏教はBC463年インドに生まれたガウタマ・シッダールタにより創始され、BC4~1世紀に経典化が進みました。AD紀元前後に至ってサンスクリット語の大乗仏典が編纂され、AD2世紀には大乗仏教として中国にも伝播しています。

ヒンドゥー教はインドやその周辺の庶民信仰が受け継がれて、BC4世紀頃にインダス川周辺で原型が形成され、AD2世紀にグプタ朝において発展し定着しました。ヒンドゥー教聖典群プラーナは、AD3~14世紀の間に成立したものと推定されています。

キリスト教はBC4年、ユダヤに生まれたイエスが創始し、AD3~5世紀に新約聖書として文書化が進みました。

イスラム教はAD570年頃アラビア半島に生まれたムハンマドを開祖とし、AD650年にコーランとして文書化されています。






こうしてみると、4大宗教は概ねBC5~AD6世紀頃に創始されていますが、文書として経典化され始めたのはAD1~7世紀であり、AD5世紀頃からの農業後波を立ち上げる原動力となったものと思われます。

2020年1月10日金曜日

リレーショナズム(万物関係観)が農耕・牧畜を促した!

農業前波を生み出したミソロジー(mythology)このブログでは新たに「リレーショナズム(relationalism:万物関係観)」という名称を与えた時代識知について、これまで5つの特徴を述べてきましたが、さらに絞り込んでみると、次の3つの要点が浮かんできます。

第1の要点は、人類が無意識次元で捉えた、さまざまな外部環境を、幾つかの “心像象徴”に形象化し、それらを連結させた「文章=神話」によって、集団的に共有したことです。

人類の言分け能力は、身分けされた対象をイメージとしての“心像”で捉える“象徴”能力と、音声化された“記号”で捉える“記号”能力に大別されます。

前者は無意識次元のイメージを“心像象徴”によって連結化した“神話”となり、後者は意識次元の観念を“音声記号”によって文章化した“物語” になります。

リレーショナズムは、まさしく無意識、心像、神話を特徴とする時代識知といえるでしょう。

第2の要点は、人類が個々人を超え、集団となって生産活動に携わる主体であることを改めて自覚したことです。

一定地域の人々は、特定の神話=文章を共有することで、個々人の次元を超えた、人間集団を自覚するようになり、共同して生活活動や生産活動へ向かっていきます。

第3の要点は、自然環境へ積極的に働きかけ、循環的な農耕や定着的な牧畜などを継続的にようになったことです。

時代識知の流れを振り返ると、石器前波を創り出した「ディナミズム(dynamism)=動体生命観」や石器後波を創り出した「インモータリズム(immortalism:造語)=生死超越観」を礎石としつつ、

リレーショナズム(relationalism)=万物関係観」は人間集団と自然環境の関係を相関的に捉えることによって、農耕・牧畜という、継続的な生産形態を可能にし、農業前波を生み出していった、といえるでしょう。


以上のような3つの要点が絡まったため、ミソロジー=リレーショナズムは自然系エネルギーをさまざまな要素間に循環させることに成功し、新たな人口容量を作り上げていったものと推定できます。