互酬制の形態を歴史的に振り返りつつ、今後の展望として、地域や国家を超えた互酬制度の方向を考えています。
下図に示したような推移を基に将来を展望すると、地球レベルの「グローバル・レシプロシティー」はいかなる方向へ向かうべきなのか、幾つかの条件が浮上してきます。
上図から浮上してくるのは、以下のような変化です。
➀制度次元・・・互酬を運営する仕組み、つまり互酬制度は、血縁、地縁、職縁などを基盤とする相互集団から、国民全体の相互扶助(年金、ベーシックインカム)を仲介する国家へと移行してきました。 これとともに、慣習的あるいは伝統的な仕組みであった「互酬」制度は、国政・行政的な「再配分」制度の要素を深めてきました。 ➁互助行動者次元・・・互助を行う人間の単位もまた、家族、血族、地縁者、同業者などの「地縁人」から、国民や公民という「観念人」に移行してきました。 これによって、互助という仕組み自体も、相互扶助という協力関係から、国家による制度的援助へと変化しました。 ③互助内容次元・・・互助行動の中味は、食糧・衣料など生活資源の提供、作業や介護など労働の提供、儀礼や交際など接遇の提供に始まり、生活資金や保険対応などの金銭提供を経て、生涯資金や最低生活費などの資金提供に至っています。 互酬基盤が地縁から国家へと移行するにつれて、互助の内容もまた、多様な互助関係から金銭的な支援関係へと変わってきています。 |
以上のような変化によって、互酬制度の基盤である「相互扶助」という精神性もまた、大きく変わりました。
互酬組織が家族・親族・同族集団から、村落や地域の居住集団、組合員や同業者などの就業集団を経て、国民という集団や政府という国家組織に代替された結果、「知縁」的な協力関係、つまり「助け合い」度は急速に薄れてしまったのです。
とすれば、今後の互助制度として、グローバル・レシプロシティーを構想する場合にも、次のような課題が浮かび上がってきます。
❶知縁関係の復活・・・地球単位の扶助関係を構築する前提として、何らかの方法で個々人の間の知縁を確保し、濃密化することが求められる(例:グローバル・ネットワークの応用)。 ❷互助精神の復活・・・互酬制の本質である「互いに助け合う」という精神性を復活するため、世界各地の生活環境や生活水準などを周知させ、相互の理解を深めることが求められる。 ❸互助内容の集中化・・・物質的な扶助やサービス的な扶助は国家など任せ、ベーシックインカムとして生活資金の互助に集中する。 |
このような基本条件を前提に、グローバル・レシプロシティーの構想を考えてみると、世界的な組織の創り方、財源、配布方法などの方向が朧気ながらも浮かんできます。