2026年3月23日月曜日

今後50年を予測する➃:ル・ルネサンス模索

農業後波の飽和期(13001350年頃)をモデルに、工業現波の飽和期(20202070年頃)の世界を予測しようとしています。

前回の「時代識知動揺=サイエンス識知の混迷」に続き、今回は「新知模索=ル・ルネサンスの模索」を展望してみます。

人口の飽和状態が続くと、人口容量を担ってきた「サイエンス」という時代識知にも見直しが始まり、新たな識知への模索が始まります。科学的理性をベースとする時代識知、つまり分散型無機エネルギー観、要素還元主義、数理思考などにも、修正あるいは見直しが求められるのです。

例えば、現在のAI技術の見直しとして、電子や分子などさまざまな粒子を統合する「量子」観念が、量子コンピューターの進展を促し、それが契機となって、統合的な識知を促す可能性が生まれてきます。

そうなると、「統合的な新科学(オムニシエンス)」という、新たな知性の形成も期待されます。オムニシエンスOmniscienceとは、中世ラテン語のomni(すべて)とscientia (知識)が結びついた言葉で、「全知」や「完全な知恵」を意味していますが、「統合的な知」、つまり「より総合化された科学」ということです。

こうした展開により、新しい世界観(New Cosmologyによる地球社会の再構築、そこへの期待が高まってきます。

例えば、20世紀末から急拡大したデジタル文化がナルシシズムを肥大させ、ポピュリズムオクロクラシー(衆愚政治)を引き起こしていましたが、今後は次第にその反省が強まり、ネオ・コミュニティズム(新地縁主義)脱市場主義など、「ポストモダン」ならぬ「ラストモダン」の発想を育むようになっていきます。

これこそ「ルネサンスの再来」、つまり「ル・ルネサンス(Re-Renaissance」とよぶべきものです。【ポストコロナは「ル・ルネサンス」へ!】でも述べたように、もう一度、ルネサンスが開花するという意味です。

ル・ルネサンスでは、オムニシエンスの進展により、現在の化石燃料エネルギー、国民国家制度、市場経済制度などを大きく超える社会構造そのものが探求されることになるでしょう。

人口の飽和化が進むにつれて、世界を見分ける基本視点、つまり時代識知についても、新たな方向を模索する動きが強まっていくのです。

2026年3月12日木曜日

今後50年を予測する➂:時代識知動揺ー前

農業後波の飽和期(13001350年頃)をモデルに、工業現波の飽和期(20202070年頃)の世界を予測しようとしています。

前回までの「人口容量限界化」に基づく「社会的混乱」の拡大が続く中で、世界認知の根底にある時代識知では、これまでのサイエンス主導への動揺が広がるとともに、新たな識知への模索が始まります。

そこで、今回から「時代識知動揺」について、「サイエンス識知の混迷」と「ル・ルネサンスの萌芽」を展望していきます。

まずは「サイエンスという時代識知」・・・これについては、混迷が予想されます。

サイエンスという識知は、【サイエンスという識知が工業文明を創った!】で指摘したように、❶要素還元主義(機械論的自然観)、❷数字・記号的思考、❸科学万能主義などで構成されていますが、この構造自体がそろそろ限界に近づいています。

第1は分断的思考の限界

飽和期の社会がこれまで述べてきたような、さまざまな混迷に陥るにつれて、それを凌駕するような、新たな知性が学問の世界にも渇望されています。

しかし、サイエンスではとても対応はできません。現在のサイエンスは、新しい理論や世界観を作るというより、既存の理論を細かく修正・補強する「微調整」行動に集中している、との指摘もあるからです(Papers and patents are becoming less disruptive over time: Michael Park et alNature, 04 January 2023)。

要素還元主義により、専門分野が細かく分けられているため、隣接分野で何が起きているかもわからないまま、より統合的、より本質的な発見が難しくなっているのです。

第2は統計的推論の限界

理化学分野はもとより、体調・知力・生活構造や政治・経済・社会問題まで、数字や観念記号で表現する数学的・統計的思考が一般化していますが、あまりの普遍化に疑いが持たれ始めています。

とりわけ近年の経済予測では、「パンデミック後の世界的インフレは一時的」や「日本のバブル崩壊後のV字回復」など、好・不況の予測が外れる事態が多く、数量的推定の限界が囁かれています。

数字や統計は、現実を完全に説明するものではなく、データに基づいて一定の傾向を推測する道具にすぎません。それにも関わらず、全てを示しているような情報手法への不信が増し、より統合的な情報を求める傾向が生まれ始めています。

第3は急進するAIへの不安

急速に進むAIによって、さまざまな分野への応用が進み始めていますが、一方では人智を超える成果が期待されるものの、他方では戦乱突発や人類超越など、さまざまな危険性もまた予測されています。

これは「科学という思考そのものの変化」を意味しており、利害得失、いかなる方向へ向かうべきか、これまた混迷状態にあります。

以上のように、人口が飽和状態を続けるにつれて、「サイエンスは全て正しい」という時代識知もまた再考すべきではないか、との意識が生まれているようです。

2026年3月3日火曜日

今後50年を予測する➁:社会的混乱-2

農業後波の飽和期(13001350年頃)をモデルに、工業現波の飽和期(20202070年頃)の世界を予測しようとしています。

「社会的混乱」については、伝染病、基本制度、国際情勢、経済制度において、大きな変化が予想されます。

前回の伝染病と基本制度に続き、今回は国際情勢経済制度を展望していきます。

国際情勢では紛争多発が予想されます。

農業後波の寒冷化や英仏百年戦争などをモデルにすると、次のように予測できます。

気候変動による干ばつ、洪水、海面上昇などで、水資源争奪、食料不足、気候難民の大量移動が発生します。2050年までに33億人が水不足に直面すると予測されており、ナイル川やメコン川などの上流・下流諸国間では「水戦争」のリスクが急上昇します(IPCCIntergovernmental Panel on Climate Change 2作業部会 第6次評価報告書)。

また海面上昇や干ばつで、2050年までに最大12億人の気候難民が発生するとの予測(Institute for Economics & PeaceIEP)もあり、大規模な人口移動によって、排外主義の台頭や内戦の勃発なども可能性が高まります。

さらに国連や既存の国際機関の機能不全が進みますから、地域紛争の拡大が予想されます。アメリカと中国の対立は、台湾を巡る緊張、南シナ海での限定的軍事衝突、サイバー攻撃・宇宙空間での妨害行為、経済圏のブロック化などで、全面的な戦争には至らないまでも、常時対立状態として2070年代まで続く可能性があります。

中東でもイランvs湾岸諸国の紛争、イスラエルと周辺諸国の限定衝突、トルコの地域覇権志向などが継続する可能性が強く、ヨーロッパではクライナ戦争終結後もNATOとロシア間で断続的な衝突が予想されます。

これらの紛争は、国家間の全面的な戦争には至りませんが、中規模な紛争が同時並行する、慢性的な不安定世界を生み出すことになります。第三次世界大戦は起きないものの、戦時体制が常態化する可能性が高いでしょう。

経済制度では市場経済の混乱が予想されます。

農業後波の農業経済終焉をモデルにすると、これまでの成長・拡大型の市場社会が次のような要因で混乱に陥っていきます。

1要因は人口容量限界化です。地球の環境容量や資源が限界に達しますから、「無限の成長」を前提とした、これまでの経済モデルは終焉します。

異常気象や海面上昇によって、洪水、干ばつ、山火事などが連鎖的に発生し、農漁業生産、サプライチェーン、インフラなど同時多発的な打撃を与え、市場機能の不安定化を招きます。

これに伴って各国の人口もまた停滞や減少に向かいますから、労働力人口の縮小、社会保障費の増大などで、成長前提の資本主義モデルは限界に達します。

第2要因はグローバル構造の変質化です。2050年頃には中国、インド、インドネシアなどが世界経済の中心となり、先進国と新興国の力関係が大きく変わります。

これにより、従来の単一グローバル市場が崩れ、複数の経済圏が併存する世界へと移行します。欧米が主導してきた市場経済のルール(知財、投資、貿易、金融)が縮小し、多極化したルール体系と併存する可能性が高まるでしょう。

第3要因はAI等高度情報化の進展です。AI(汎用人工知能)と高度なロボティクスが、ホワイトカラーとブルーカラー双方の労働を代替し、富の集中が資本側へ加速すると、労働分配率が低下します。これにより、資本家層と労働者層の格差が拡大するにつれて、政治的ポピュリズムを刺激し、市場原理そのものへの反発が強まります。

以上のような変化で、これまでの市場経済制度は、前提条件そのものが揺らぐ「制度的危機」に陥る可能性があります。国家分断化やグローバル経済縮小化が進めば、経済問題を超えて、文明の持続可能性に関わる構造的課題となるでしょう。

以上、「社会的混乱」について、伝染病、基本制度、国際情勢、経済制度の4つの面から、今後の50年を展望してきました。

これらの変化によって、現代社会を支えてきた時代識知もまた、大きな変貌を迫られます。どのように変わっていくのでしょうか。